« 今日のだいちゃん | トップページ | この世界の片隅に »

2009/04/26

ダイヤモンド

Img298 青山広美 著。ビッグコミックスピリッツにて1998年~99年にかけて連載、単行本全8巻完結。

 ヤクザの下っ端ながらカツアゲも満足にできない能なしのお人好し、種田恒夫は、自らの浅慮な行動から誤って対抗組織、般若組組長を拳銃で撃ち殺してしまう。生まれ変わったら今度は誰かの役にたつような人間になりたい。種田はそう思いながら、大好きだった母親に棄てられた思い出のドーム球場で自殺しようとするが、外野席にいたところを東京フェニックスの若き4番、童子秀巳の放ったホームランボールが直撃。自殺は失敗し、種田は逮捕、懲役18年の実刑判決を受け、投獄されてしまう。それから五ヶ月後……。般若組の報復を恐れて独房で一人震えていた種田は、突如現れた見知らぬ男たちに拉致されてしまうが、連れて行かれた先はなんと、あの思い出のドーム球場だった。「今日からここがお前の監獄だ」 監督を名乗る男はそう言うと、種田に野球のバットを手渡す。それは、過剰防衛で誤って浮浪者を殺してしまった東京フェニックス4番童子秀巳の影武者としての、種田恒夫の物語の始まりであった。

 設定や展開にちょっと荒唐無稽なところのある、プロ野球を舞台としたヒューマンドラマ。見た目がそっくりというだけで影武者に仕立て上げられたずぶの素人が、たった2週間でプロの球を打てるようになり、その後は三塁守備まで機敏にこなしてオールスターまでにホームラン35本を打ってしまうという、それだけ聞くとリアリティがあるとはとても言えないような作品。ですが、そんな無茶な設定や展開がむしろアリだと思ってしまうくらいの、最高に面白い作品でした。

 プロという世界に入り、ただ好きというだけでは野球をやっていられなくなった人たち。そんな彼らが、今まさに最高に楽しんで野球をやっている種田と接し、押し殺していた自分の本当の想いを取り戻す。そういったテーマがこの作品の根本には流れており、それがそのままこの作品がこれだけ面白い理由にもなっていると思います。199勝投手浜野正平編や、ナックルボーラー山田一男編、メジャー帰りのフラッシュ早川&不肖の弟早川勝次編等の最高に面白くて格好いいエピソードには、例外なくこのテーマが含まれています。また、最終回、童子がいばらの道を選んだ理由も、自分の本当の想いに従う、というテーマに基づいた結論と言えるでしょう。

 今回はいつもにまして断定口調ですが、もうそれだけ私がこの作品を好きなんだという理由だと思ってください。最終回は読んでいて泣けました。今回久しぶりに読み返して、やっぱりうるっと来ましたよ。読むことができて幸せだとまで思えた作品は少ないですが、私にとってこの作品は、間違いなくそのうちの一つです。

 作者は現在、週刊少年チャンピオンにて連載中の「ギャンブルフィッシュ」の原作をやっています。確かに画はクセがあるし今風でもないので、少年誌では原作の方がいいのかもしれませんね。ギャンブルフィッシュは波はありますが総合的には面白いですし、そろそろ来るであろうクライマックスに向けて今後とも期待していますが、また作者本人の画での作品を読みたいなー、と思っています。

|

« 今日のだいちゃん | トップページ | この世界の片隅に »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 今日のだいちゃん | トップページ | この世界の片隅に »