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2009/06/28

大奥

Img362 よしながふみ 著。MELODYにて2004年より連載中、単行本4巻まで以下続刊。

 江戸時代初期、東国の山村で最初の感染者を出した赤面疱瘡は、またたくまに関東、そして全国へと拡大していった。感染するのはほとんどが十代以下の若い男子で、死亡率は8割というその病気の前に、全国の成人男子の人口は激減。そしてあまりの生存率の低さから、諸藩は世継ぎを得ることができずに改易の憂き目にあっていたが、それは将軍家とて同様だった。幕府はやがて各藩の世継ぎを女とすることを認め、同様に三代将軍家光の時代から、将軍は女が継ぐこととなる。――そしておよそ80年が経過した現在、男子の人口は女子の約4分の1で安定しており、将軍職もずっと女が継いでいるという状態であった。当然の如く、将軍の正室や側室、その子女や女中の居所である大奥も、女ではなく男が務める場へと変貌を遂げていた。時は正徳6年(1716年)、貧乏旗本の跡取り息子、水野祐之進は、両親への恩返しの為、俸禄を目当てに大奥へ上がることを決意する。やがて、御中﨟(将軍の世話係)へと取り立てられた水野は、八代将軍、吉宗のご内証の方(未婚の将軍の最初の夜の相手)へと抜擢されるが、ご内証の方は将軍を傷つけたという罪で、死ななければならない運命なのであった……。

 そんな感じの、歴史IF物。IFなのは只一点、正体不明の疫病により男がばたばたと死んでいき、男女比は1:4となってしまう、という部分だけであり、その設定の上で歴史を組み立てなおした作品である、と言えるでしょう。上記後半の水野祐之進のくだりは1巻のあらすじですが、この作品の主人公は、おそらくは徳川吉宗? 1巻ラストで、女が男名で家督を継いでいるということに疑問を抱いた吉宗が、家光の時代から生きている男が書き続けている「没日録」という日記を読むことで、その真実を知っていく、という感じなのですが、2巻以降はずっと過去編なんですよね。家光、及び春日の局の時代から始まって、4巻ラストでは綱吉の治世になっています。このまま吉宗の時代まで持っていって、過去編を終わりとするんでしょうが、果たしてその後どうなることやら、興味は尽きません。少なくとも私が読む限りは、非常にリアリティのある、スケールの大きな作品と言えるでしょう。ずばり言って、面白いです。

 大奥は女人禁制な為、自然男色の描写もそれなりにあります。掲載誌が女性誌であることも含め、読む人を選ぶ作品だとは思いますが、内容は非常に面白いため、もっともっと広く知れてほしい作品の一つではありますね。ただ、現在はまだ過去編の最中であり、しかも過去編の方が長いというのが玉に瑕。せめて過去編が終わってくれないと、ちょっと他人にも薦めづらいですね。

 作者はこれよりも、現在モーニングにて連載中の「昨日なに食べた?」や、ドラマ化もされた「西洋骨董洋菓子店」の方が有名でしょう。この「大奥」も、今のところは非常に面白い作品だとは思うのですが、完結の仕方によって評価も変わってしまいそうです。果たして物語はどこへ行き着くのか、そもそも、ベクトルはどっちを向いているのか。それを知るため、今後とも読み続けていきたいと思います。

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