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2009/10/18

乙嫁語り

Img475 森薫 著。Fellows!にて2008年より連載中、単行本1巻まで以下続刊。

 19世紀中央アジア、カスピ海周辺の地方都市に定住するエイホン家に嫁いできたのは、アミル=ハルガルという二十歳の若いとは言えない女性だった。十二歳の花婿、カルルクは聞いていた話と違ったことで驚いてはしまったが、それでも式を挙げ、二人は一緒に暮らしはじめる。やがて、少し変わったところはあるものの、裏表の無い真っ直ぐな性格のアミルは、エイホン家の大家族に受け入れられていく。ところが、カルルクとアミルが遊牧をしている叔父、ウマク家を訪ね、絆を確かめ合っていたときに、事件は起こる。なんとアミルの兄、アゼルの一行がエイホン家に現れ、あの結婚は手違いであったので、アミルを連れて帰る、と言うのであった……。

 そんな出だしの、中央アジア(カスピ海の東側地域)を舞台とした、アミルとカルルク(とその家族)の物語。タイトルはおそらく乙女+嫁+物語の合成であり、新婚物と言ってもいいのでしょう。副題も The Bride’s Stories ですしね。上記あらすじ後半のような筋となりうるストーリーはありますが、やはり真骨頂はその辺りとはまったく関係のない、日常生活をただ描くという部分。裏表が無さ過ぎてやや融通に欠けるアミルと他者の会話はそれだけで楽しいですし、馬に乗ったり、弓を射たり、ザクロを取ったり、キツネを捌いたり、歌を歌ったり、パンを焼いたりといった本来なら単なる日常の一場面も、緻密な柄や細工を描くのが大好きな作者の手にかかれば、あっというまに素敵な物語に変わってしまいます。読む作品というよりは、なんだろう、かみしめるじゃなくて、読みしめるような作品。読めば読むほど、単なる日常生活だというのに、味が出てくるわけですよ(落ち着け

 前作にして代表作「エマ」と比べると、舞台は英国から中央アジアへと変わり、メイドさんも一切出てこなくなったわけですが、森薫はまったく変わっていなかった。ぜひ今後も、このまま行って欲しい。心からそう思える作品です。

 ちなみに、この当時、地方での女子の結婚適齢期は15~6歳とのことなので、アミルはだいぶいきおくれということになるようですが、何故いきおくれているのかは不明。そういった隠された設定も色々あるようですし、今後とも楽しみにしたいと思います。唯一の不安は、掲載誌が持つかどうかってことかな……(涙) まぁ仮に持たなくても、コミックビームという受け皿はありますけどね。

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