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2009/12/15

サラディナーサ

Img534 河惣益巳 著。花とゆめにて1985年~89年にかけて連載、単行本全9巻完結。画像は文庫版全5巻。

 時は西暦1571年、世界最強のスペイン海軍の中核を担うフロンテーラ公爵家の跡継ぎとして生まれた10歳の少女、サラディナーサは、レパントの英雄にしてスペイン王弟であるドン・ファンから、結婚を申し込まれてしまう。王弟という身分ながらフロンテーラ家に対しても礼を欠くことなく、また父レオンに匹敵する剣の腕を持つドン・ファンを、サラディナーサは徐々に慕うようになっていく。だが、自分こそがサラディナーサの本当の父であると考えるスペイン王フェリペ二世はそれを認めず、ドン・ファンをフランドル総督に任命し、遠くネーデルランドの地へと追いやろうとする。断れるはずもないドン・ファンはその命令に従い、こうして二人は、サラディナーサが17歳になった時に結婚をする約束をし、離ればなれとなってしまうのであった……。

 そんな出だしの、いわゆる大航海時代のスペインとその周辺国を舞台とした海洋ロマン。上記あらすじが文庫版1巻の半分くらいまでで、これにてプロローグ終了。時代は6年後に飛び、フロンテーラの姫提督として才覚を発揮していたサラディナーサは、未だネーデルランドで苦戦しているドン・ファンに会うため、フランドルへ向かうが……という感じで話は進んでいきます。サラディナーサ及びフロンテーラ家は架空のものですが、それ以外はすべて史実が元となっており、特にキーマンの一人であるドン・ファンは、スペイン王弟でありレパント海戦の総司令官であり、後にネーデルランド総督になるという部分までが史実通りです(もちろんそういう経歴になる理由は違うでしょうが)。他に、スペイン王フェリペ二世やイングランド女王エリザベス一世を筆頭に、細かい実在の人物も多数出てきて、非常にうまく作品に組み合わせてあると言えるでしょう。以上のような理由から、大航海時代の様々な事象、「世界最強と謳われていたスペイン王国」「カトリック対イスラムの戦闘であったレパントの海戦」「スペイン支配下のネーデルランドにおける独立戦争」「対スペインに暗躍する新興国家イングランド」等を前情報として知っていれば、格段に興味深く読めるようになる作品となっています。そしてもちろん逆にそのあたりの歴史を知らない場合、おそらくはストーリーの理解が難しくなってしまうのでしょうが、こういった史実を元にした作品は、そのあたりは避けては通れない道なんでしょうね。

 あとは、サラディナーサがスペイン海軍所属である以上、来るべきアルマダ海戦をどうするのか、というのが当初は気になってしまうわけですが、このあたりは婚約者であるドン・ファンがネーデルランドに左遷させられたという設定も搦めて、非常に面白い返しとなっています。これも、史実を知っていてこそ楽しめる部分であるわけで、オンラインゲームである大航海時代onlineをサービス開始当初からプレイしている私にとっては、ピンポイントで楽しめる作品でした。

 こういった史実を元にした作品というのは、時代考証と歴史との整合性を高める作業が非常に面倒なんじゃないかと思うんですよね。ところがこの作品は、少なくとも私が読む分には特に違和感も無かったですし、作者のストーリー構築力は高いなー、と思わせるに十分なものではありました。こうなると他の作品も読んでみたいとは思うのですが、実はこの作者、絵が古いタイプの少女マンガという感じで、ちょっとその、普段の私だったらまったく手に取るような絵柄ではないんですよね。この作品も、大航海時代onlineで一緒に遊んでいる友人から教えてもらわなければ、まず読むことは無かったでしょうし……。長編にいきなり手を出すのはちょっと怖いので、機会を見つけて短編に手を出してみるのがいいのかなー、と思っています。

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