2009/12/21

機動戦士Vガンダム外伝

Img540 原案・矢立肇 富野由悠季、漫画・長谷川裕一。少年キッズ1994年に掲載、単行本全1巻完結。

 宇宙世紀0153、地球圏統一を狙うザンスカール帝国とそれを阻止せんとするリガ・ミリティアの戦闘は、激化の一途をたどっていた。そんな中、リガ・ミリティアのエースパイロット、ウッソ・エヴィンは、偵察飛行中に敵の仲間もろとも、金色のモビルスーツに撃墜されてしまう。木星船「ハインライン」の船長、木星じいさんによって救出されたウッソと敵モビルスーツのパイロット、カムイは、そのまま彼らのコロニー「ダンディ・ライオン」へと向かうが、なんとそのコロニーは巨大な宇宙船、そこに住む者は全員がニュータイプであり、彼らは今まさに地球圏を棄て、遙か4.22光年も離れたプロキシマ・ケンタウリへ旅立とうとしているのだった。木星じいさんから、お前らも一緒に行かないか、とウッソとカムイは言われるが、考える暇も無くそこに、ウッソを撃墜した金色のモビルスーツ、ジョングが襲いかかってくる。カムイによれば、そのモビルスーツのパイロットの名前はスケイル。彼やカムイはザンスカール帝国のニュータイプ部隊であり、その中でもずば抜けた才能を持つスケイルは、なんと心で嘘が付けるのだという……。

 そんな出だしの、機動戦士Vガンダムの外伝マンガ。作者が何度か使っている「歴史は――常に表に出なかったいくつかの断片を持つ」で始まる外伝シリーズの一つでもあります。上記あらすじ通り、内容は非常にシリアスで、長谷川裕一解釈による「ニュータイプとはどこに向かっていくのか」という答えの一つになっている作品だと思います。また、今作を含む長谷川祐一オリジナルのガンダムシリーズでは、機動戦士ガンダムZZの主人公、ジュドー・アーシタのその後が断片的に語られているのですが、そのラストシーンが載っているのも特徴で、ZZ好きならちょっと気になる作品だとは思います。ただこのあたりは、機動戦士ガンダムユニコーンが発表されてしまったことで、一部不利になってしまったとは思いますけどね。サンライズ公認の作品ではありますが、正史ではないということで、仕方ないのでしょう。

 そして、この作品においてもっとも素晴らしいのが、ラストシーン。スケイルを倒した後、ウッソは地球圏に残ることを決め、木星じいさんとカムイはプロキシマ・ケンタウリへと旅だってしまうわけですが……ここに至って、話はニュータイプとかオールドタイプとかではなく、「人はいつ地球人ではなくなるのか」という部分に向かっていくんですよね。ガンダム世界でもスペースノイドとアースノイドの対立は明確ですが、そのあたりを突き詰めた結果の一つと言えると思います。もしかするとここに、地球人ではなくなるにはニュータイプとしての素養が必要だった、という解釈まで入るのかもしれませんが、さすがにそれはちょっと好意的に解釈しすぎかなー。まーちょっとぼかしましたが、いやはや何はともあれ、このラストシーンは最高です。これがあるからこそ、まだ感想を書いていないクロスボーンガンダムやクロノアイズ、ダイソード等をさしおいて今作の感想を書いた、というわけでした。

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2009/12/14

キラキラ☆アキラ

Img533 曙はる 著。まんがタイムファミリーにて2007年より連載中、単行本2巻まで以下続刊。

 同じマンションの301号室に住む美波アキラと、201号室に住む林桃太郎の二人は、幼なじみにして大の仲良し。アキラは父が買ってくれた縄梯子を使って、ベランダ伝いに毎日のように桃太郎の部屋にやってきます。しかし高校生になっても無邪気に行き来を続けるアキラに対し、桃太郎はなんだか態度がぎこちない感じに。それもそのはず、可愛くて元気で明るいアキラは学校の人気者であり、桃太郎も彼女を異性として意識せざるをえなくなってきてしまったからなのです……。

 そんな感じの、学園ラブコメ4コマ。主人公はアキラでいいのでしょうが、視点としては桃太郎から見た物が多いので、二人が主人公と言っていいのでしょう。アキラの天然というか天真爛漫さをネタにしたものが多いわけですが、他の作者にはないタイプの天然ネタが多く、これは作者のセンスの勝利なんでしょうね。高校生にしてはちょっと子供っぽいネタが多めですが、それもアキラの性格を表しているということなのでしょう。

 以上のような感じなので、アキラと桃太郎のラブコメは進展があまりないのですが、アキラの事を好きな青島とか、その青島のことが好きな羊子とか、キャラが増えるに従ってそのサブキャラたちがラブコメを演じてくれるので、2巻以降はラブコメ色もだいぶ強くなってきました。ただ、ラブコメ4コマとしては正直フツーなので、やはりこの作品の特徴は、アキラの天然さをネタにした部分だと思っています。

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2009/10/17

境界のRINNE

M0384445201 高橋留美子 著。週刊少年サンデーにて2009年より連載中、単行本2巻まで以下続刊。

 小さい頃に一週間神隠しにあい、それ以来幽霊的なものが見えるようになってしまった高校生1年生、間宮桜。中学を卒業して、少し大人になれば、そういった妙な物も見えなくなるんじゃないか。そう淡い期待を抱いていた桜だったが、相変わらず通学路では自縛霊に話しかけられるなど、以前と変わらない日々を送っていた。その日も、隣の席の男子生徒、六道りんねが初登校してきたと思ったら、他の生徒や先生たちには彼のことが見えていないという事態に遭遇する。また幽霊か……そう思う桜をよそに、りんねはドッグフードを取り出したかと思うと、それにつられてやってきた巨大なチワワの幽霊と話し始める。どうやらりんねは、そのチワワを成仏させようとしているようなのだが……数瞬後、巨大なチワワは突如りんねを丸飲みにすると、窓から外へ出て行ってしまうのであった。放課後、帰宅の途についていた桜は、小さくなったチワワを抱きかかえたりんねと再会する。幽霊ならば、通り抜けられるはず。毎日身をもってそれを体験していた桜は、りんねの事も素通りしようとするが、予想に反して桜はりんねに頭突きをしてしまう結果となる。そう、実はりんねは幽霊ではなく、現世に未練を残し成仏できない者たちを輪廻の輪に導く、死神のような存在なのであった……。

 そんな出だしの、霊能コメディー。りんねは画像の羽織を着ている時は霊と同じ体質になり、脱げば一般人にも見えるようになります。ストーリーの基本はまず幽霊が現れ、それをりんねが成仏させる、というものですが、りんねは死神としての能力は高くなく、有料の道具を使わないと霊を成仏させることができません。ところがりんねは、死神の祖母と人間の祖父のせいでものすごい借金を背負っていて、道具の使用料も満足に払えない始末。関わってしまった桜はそれを見て見ぬふりをすることもできず、仕方なくその料金を肩代わりしていく……という感じで話は続いていきます。作者の他作と比べると、それなりにストーリーはあるもののコメディー比も高いので、「らんま1/2」が一番近い感じですかね。作者の作品は描けば売れるしアニメ化も当然と、ある意味プレッシャーも大きいのかもしれませんが、今のところはこの作品も他作と比べて遜色なく面白いですし、今後とも楽しみに読み続けたいと思います。

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2009/09/02

究極超人あ~る

Img429 ゆうきまさみ 著。週刊少年サンデーにて1985年~87年にかけて連載、単行本全9巻完結。

 撮影旅行で宇奈山公園にやってきていた春風高校光画部の2年生、大戸島さんごは、公園内の池から自転車に乗って飛び出してきた学生服姿の男に出会う。2週間この山でさまよっていたという彼の名は、R・田中一郎。なんと本当なら、2週間前にさんごのクラスに転入してくるはずの男であった。人の話を中途半端に聞かない超マイペースっぷりと、見事なまでのボケっぷり、いじられっぷりを買われ、光画部へと入部することになったRだったが、なんと彼には、もう一つ秘密があった。それは、180度首が回ること……ではなく、実は彼は人間ではなく、アンドロイドなのであった。

 そんな出だしの、高校の光画部(いわゆる写真部)を舞台としたドタバタコメディー。オタク系スクールライフ作品の走りでもあります。メインとなるストーリーは特に無く、日々のドタバタをただ綴っていく日常系作品ですが、キャラ同士のかけあいが非常に楽しい作品でした。主人公のあ~るはもちろん、さんごやしいちゃん、3年の鳥坂先輩にOBのたわば先輩など、どのキャラも非常にいい味を出しています。作品内時間が現実時間とリンクしていたのもこの作品の特徴で、夏に始まって翌春には全員が進級、鳥坂先輩は卒業して、代わりに新入生が新入部員として入ってきたりもします。結局さらに翌年、あ~るが卒業した年の夏に連載終了となりましたが、やはり初期レギュラーであった上記キャラたちの人気が高すぎたんでしょうね。どのキャラも卒業後もフツーに登場してはいましたが、やはり光画部部室がメインの舞台であった以上、話にからませづらかったんでしょう。最終年度の新1年生を3人も入れていたことから、おそらく作者はもう少し続ける気があったんでしょうし、そういう意味ではちょっとだけ残念な終わり方でした。でも、作品自体は文句なく面白かったですけどね。

 作者の代表作はおそらく「機動警察パトレイバー」になるのでしょうが、出世作と言えば間違いなくこの作品でしょう。現在はビッグコミックスピリッツにてセルフリメイクの「鉄腕バーディーEVOLUTION」を連載中であり、これも問題なく面白いのですが、あ~る以降はストーリーの重厚な作品ばかりな気がするんですよね。またそのうち、あ~るのようなお気軽コメディー作品を読んでみたいなー、なんて思っています。

 そして、現在発売中の「月刊スピリッツ」創刊号に、「ゆうきまさみキャラ大集合クリアファイル」なんてものが付いていまして、中央に描かれているのはバーディーなのですが、後ろにあ~ると鳥坂先輩が描かれていたりするんですよね。正直私はこの手のオマケグッズはそれほど興味は無いつもりなのですが、あまりの懐かしさに思わず買ってしまい、そしてあ~るが読みたくなって、本の山の中から発掘してきた、という次第でありました。

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2009/08/29

逆境ナイン

Img425 島本和彦 著。月刊少年キャプテンにて1989年~91年にかけて連載、単行本全6巻完結。

 逆境とは、思うようにならない境遇や、不運な境遇のことを言う! 夏の甲子園大会地区予選を間近に控えたある日、全力学園野球部主将を務める3年生、不屈闘志は、校長から「廃部だ!」の一言を突きつけられてしまう。弱いから廃部。あまりにも簡潔な校長の言葉に、不屈は逆に発憤。この校長室の隅に、甲子園優勝旗を飾りたくありませんか?! という言葉と共に、その証拠として10日以内に地区最強の甲子園常連校、日の出商業を叩き潰すという誓いを立てる。不屈を含めて9人しかいない野球部員たちは、当初はできるわけないと反発するものの、最終的には不屈に同調。だが、地獄のような特訓を経て迎えた決戦の3日前、野球部員9人のうち5人が怪我や補習でリタイア。さらに翌日1人が風邪、1人が逃亡してしまい、残ったのは投手の不屈と捕手の大石のみ。さらにあろうことか、試合前日夜に今度は不屈が、利き腕である左腕を脱臼してしまう……。

 そんな感じの、熱血系野球マンガ。逆境があって、それを乗り越える、というのを繰り返すわけですが、魔球は出てくるわ100点差を逆転するわと、設定や展開は明らかにトンデモ系。しかしそういった表面部分とは裏腹に、不屈を筆頭とする登場人物たちの言動、さらに言えば生き様が無駄に熱すぎるという、本質的には熱血系の作品です。変にひねってしまって、あれれ? これはどうなの? と思う部分もあるにはあるのですが、日の出商業との練習試合編、中間考査編、そして伝説の109点差をつけられた地区予選決勝、対日の出商業編あたりなんかはもうとにかく熱すぎます。全国大会決勝戦前日の桑原さんとの会話とかも最高。男とはこうであらねばならない、みたいな理想論を掲げ、そのまま最後まで突っ走ってしまったという、完結したのが奇跡のような類い希なる傑作でした。本当に面白かったです。

 この作品自体は全6巻で完結(最終回の終わり方もまた見事です)ですが、不屈がこの後プロ入りした後の話を描いた「ゲキトウ」という作品が存在します。……が、正直逆境ナインを超えることは全然できないまま、残念ながら打ち切り。逆境ナインの熱さというのは、青春の熱さ、という風に例えられると思うんですよね。無骨で融通が利かないけど、でもどこまでもまっすぐな熱さ。そしてその青い熱さは、プロという商業の世界では生きていけないものでもあると思うんですよ。再開の可能性もあるとのことですが、もし再開するのなら、そういった熱さをまた読める展開になっているといいなー、と思います。

 それと、この作品は、2005年に実写映画化もされていたりします。知ってはいたのですが、実写映画だろうがアニメだろうが、この原作を超えることはできないだろう、という思いが私の中にあったため、意図的に観ませんでした。こういうネガティブな考え方は、やめたほうがいいとは思ってるんですけどねー。

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2009/08/06

危険がウォーキング

Img401 星里もちる 著。プチアップルパイにて1986年連載開始、掲載誌を月刊少年キャプテンに移し、89年まで連載、単行本全4巻完結。

 夏休みを控えたある日、お笑い好きの中学1年生、牧野いくろうは、この春に北海道から越してきた岡原佳枝に、ついに告白を決意する。だが放課後コート裏に来て欲しいという手紙にOKをもらったのはいいものの、突然教室で謎の爆発が起こり、怪我をしたいくろうは病院へ搬送。爆発の中心にいたにもかかわらず無傷だった佳枝は、事情聴取のために警察へ連れて行かれるが、なんとそこで恐るべき事実が明らかになる。それは、佳枝の汗はニトログリセリンに近い成分でできており、気温が30度を超えると、落ちたショックなどで爆発するというのだ。冗談のような話だが本当のため、佳枝は気温が下がる夕方まで、警察内で保護されることになるが、そこで彼女はふと思い出す。放課後コート裏で、いくろうが待っているということに……。

 そんな設定の、ドタバタラブコメディー。気温もしくは室温が30度を超えている状態で汗がおちると、爆発します。あと涙も爆発しますが、涙の場合は感情の大小で爆発の規模が変わります。いくろうは佳枝の体質について特に有効な手だてをもっているわけではないのですが、暑いところには行かせないようにしたり、一緒に居ないときでも爆発があれば駆けつける、というヒーロー的立ち回りです。あといくろうがいることで話がコメディーに大幅に偏り、あまり深刻にならずに済んでいる、と言う感じでしょうか。特異な設定ではありますが、そもそも学園ラブコメとしての出来も良かったし、非常に面白い作品でした。

 この作品には山場が2回ありまして、1回目が三角関係の挙げ句に、佳枝が北海道へ帰ってしまおうとするところ。北海道に戻ってしまえば気温が30度を超えることはないでしょうし、ニトロの汗を気にする必要もありませんからね。2回目が温室状態のエレベーターに、佳枝といくろうの2人が閉じこめられてしまうところ。このままだといくろうに大怪我をさせてしまう……、と考えた佳枝は、自らの意志で新陳代謝を止め……。というものです。パターンは違いますがどちらもこの作品だからこその山場であり、こういった山場があったからこそ、この作品自体が面白かったんだろう、と思っています。

 作者はその後小学館に移り、ビッグコミックスピリッツで描いた「りびんぐゲーム」が恐らく代表作と言えるものでしょう。というかりびんぐは、私のマンガ人生の元となる作品(のうちの片方)です。私にとっては記念碑的作品のため、タイミングを見計らってレビューする予定。閑話休題。

 現在作者は、ビッグコミックスペリオールにて「光速シスター」を不定期連載中。作者の作品って基本的にオトナが主人公であることが多く、中高生が主役の作品って初期の頃だけなんですよね。また中高生を主人公とした作品を読みたいなーとは思うのですが、今となってはさすがに難しいのかなー。

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2009/06/19

きみといると

Img352 かがみふみを 著。コミックハイ!にて2008年より連載中、単行本1巻まで以下続刊。

 ある夏の日、急な腹痛に襲われていた高校1年生の岩井良明は、トイレを借りるために入った喫茶店で、一人のアルバイト店員の女の子に出会います。トイレを借りただけでは悪いと思い、岩井がアイスコーヒーを注文すると、女の子はコーヒーを煎れはじめますが、かなり真剣な様子。それもそのはず、実はちょうど店のマスターが外出中で、一人でコーヒーを煎れるのは初めてだったのです。初めてのお客さんは、トイレを借りに来た人。その出会い方は岩井にとっては最悪のものでしたが、その日からアルバイト店員の女の子のことが気になって仕方なくなってしまうのでした。

 そんな出だしの、純情高校生同士のラブコメディ。作者の他のストーリー漫画同様、恋愛要素の方が多いラブコメです。基本的に善人しか出てこないのも同じで、トイレを借りに来た岩井くんに対しても、女の子(山河 春)はまったくネガティブな考えを持つことはなく、まるで天使か聖母かというくらいです(言い過ぎ) 岩井くんの方は自分が恋愛感情を持っていることに最初から気付いていますが、山河さんの方は当初はわかっておらず、徐々に徐々に恋愛感情が積み重なっていくという2人の純情な関係は、正直読んでいてニヤニヤが止まりません。作中で岩井くんが部屋の中とかでゴロゴロと身もだえながら転がりまくっていますが、まさにそんな感じ(笑) 世はツンデレがもてはやされていますが、こういうデレデレ同士のカップルもまたいいですよ? たまに死にたくなりますが……

 連載開始当初は、作者の(個人的)代表作「ちまちま」を超えるのは難しいなー、と思っていたのですが、単行本になって読んでみると、これはこれでいいですね。ちまちまは恋愛初心者同士のラブコメでしたが、こちらはそこから一歩踏み込んだ感じですし、比べるのが野暮だったってものでしょう。

 ただ一つだけ気になるのは、ちまちまは単行本全1巻という短さが、作品のまとまりという点で非常に効果的だったと思うんですよね。それに対しこの作品は、すでにちまちまよりも連載期間も長く、今後どうやって話を広げていくのかなー、という点においてちょっと不安です。すでにその予兆は出ていて、ストーリーを引っ張るため&盛り上げるためなのはわかるのですが、あえてすれ違いやいざこざを起こしているようにも見えてしまうんですよねー。その話中で解決するならまだしも、何話もかけてやられたりしてしまうと、正直げんなりしてしまいます。らぶらぶな話だけじゃダメですか? いや、ダメなんでしょうが……。

 そしてもっと困るのが、三角関係。長期連載にするには必須の設定なんでしょうが、私には正直うんざりです。いや、この作品は、三角関係に発展しそうな要素は今のところありませんけどね。過去にもこの作者でそういった例は無いと思うので、今後も無しという方向で一つよろしくお願いします。もしやるのなら、最初っから三角関係ラブコメにしておいてください。

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2009/06/18

ギャンブルフィッシュ

Img351 原作・青山広美、作画・山根和俊。週刊少年チャンピオンにて2007年より連載中、単行本12巻まで以下続刊。

 エリートと金持ちしか入ることのできない超名門校、獅子堂学園。そこに転校してきた白鷺杜夢は、初日から学園のマドンナ獅子堂美華にあえてちょっかいを出すことで生徒たちを挑発、そのようなことはやめろと忠告をしにきた風紀委員の青戸に対し、宝探しゲームで敗けた方が言うことを聞く、という勝負を持ちかける。教室に隠された1枚の100円玉。その隠し場所を書いた紙を1枚と、偽の隠し場所を書いた紙を9枚を青戸が用意し、それを見た杜夢が1分以内に隠された100円玉を見付ければ勝ち、というものだ。青戸は紙を倍の20枚とすることで勝負を受け、しかもすべての紙に偽の場所を書くという手段に出るが、杜夢はディレクション(視線を誘導する技術)を使うことでそれを看破、見事100円玉を見付け出し、報酬として青戸がイカサマをし、その上で敗けた証拠となる100円を手に入れる。そして再戦はいつだろうとなんだろうと受けるが、次は200円の勝負、その次は400円、さらにその次は800円と、倍々ゲームで行うと言う。「この学園に何しにきた!」 そう詰め寄る青戸に対し、杜夢は「一ヶ月でこの100円を100億に変える」と宣言するのであった。

 タイトル通りギャンブル漫画ですが、純粋なギャンブルの勝負ではなく、いかにイカサマを決めるか、もしくは相手のイカサマを見破るか、という部分に重きの置かれた作品です。必然的にストーリーは、序盤は常に対戦相手が(少なくとも表向きは)有利で、そこから逆転していく、という流れとなります。そしてその逆転方法が鮮やかであればあるほど面白くなるわけで、そういう意味でこのギャンブルフィッシュは、間違いなく面白い作品であると言えるでしょう。物語はこの後勝負を繰り返し、次第に杜夢の本当の目的も明らかになってきつつ、究極のツンデレヒロイン、阿鼻谷(画像のキャラ。決めゼリフは「アビィ!」)との最終決戦に向かっていく、という感じです。いやー、阿鼻谷はホント最高のヒロインですよ。阿鼻谷なくしてこの作品は語れないと言って間違いないでしょう。ちなみに単行本表紙にはヒロインキャラしか出てこないので(杜夢も出たことが無い)、阿鼻谷がヒロインであることは疑いようのない事実です。マジで。

 問題点もいくつかあります。まず鮮やかな逆転劇という定義ですが、作中で登場人物がどう言おうと、読者がそう思えなければ鮮やかではないのは当たり前。そういう意味で、ルールがわかりやすいトゥーアップ(コイントスゲーム)やブラックジャック、ダイス・スタッキング(ダイスを積み上げて出目を競うゲーム)等は本当に見事なんですが、逆にルールが解りづらいビクトリーフラッグ、ミートパイルーレット等は、爽快感がどうしても少ないですよね。いかに読者に、最初は「これは勝てないだろう」と思わせ、その後「その手があったか」と思わせるか、という勝負であると言えるでしょう。あとは、作品が面白い以上は重箱の隅と言えるのですが、1ヶ月で100円を100億にすると言っているのに作中ではもう何ヶ月も経ってるとか、素数ダイス勝負の時に出てるサイの目と言ってるサイの目が食い違ってるとか、もったいないツッコミ所がいくつかあるのが残念です。

 本編は現在、クライマックスへ向けたトーナメント戦の真っ最中ということで、おそらく終わりはもう見えているのでしょう。最後まで鮮やかな逆転劇を期待しています。あと下剤を盛られたりしちゃう汚れ役ヒロイン、月夜野に活躍の場を!(聞いてない

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2009/06/09

詭弁学派、四ッ谷先生の怪談

Img343 古舘春一 著。週刊少年ジャンプ今週号(2009年28号)掲載読み切り。

 中学国語教師、四ッ谷文太郎の趣味は、怪談を創作すること。そしてそれを生徒に聞かせ、生徒に悲鳴を上げさせるのが生き甲斐なのだ。2週間前、四ッ谷が勤める学校の生徒が列車に撥ねられ、即死するという事故があった。だが現場からは、なぜか下半身だけが見つかっていないという。四ッ谷はその事故から、実は下半身はまだ動き回っていて、すでに埋葬されている上半身を捜して歩き回っている、という怪談をつくりだす。さらには教職員更衣室に落ちていたミカちゃん人形の下半身を現場近くの街灯に貼り付けて、下半身の影が投影されるという演出までもしてしまうのだ。だがその怪談が学校中に広まった頃、今度は生徒の脚に尋常ではない興味を示す、三村という先生の存在が明らかになっていき、生徒の興味は四ッ谷の作り出した怪談ではなく、三村の不気味な言動へと移っていく……。

 これは推理ホラーとでも言えばいいのでしょうか。いきなりけなすのもなんなんですが、一読しただけだと何が焦点なのかわからない作品だったりします。まず推理部分ですが、犯人は中盤で明らかになってしまっているし、ラストのひねりも特にないので、推理をメインにした作品ではないでしょう。ところがホラー(怪談)部分も、ひねりはあるもののそれは中盤で明らかにされており、結局ラストのひねりは無いんですよね。なので、中盤で話がだいたい終わっている、間延びした作品だなー、というのが最初の感想でした。

 ところがよくよく読んでみると、もう一つ筋が隠されていることにようやく気付きました。いや、隠しているつもりはないんでしょうけど、これはなかなか見つからないでしょう。その隠されているあらすじを書いてみると、こんな感じです。

 四ッ谷先生は怪談をつくるのが好きで、しかもその怪談は、延々と語り継げられるものでなくてはならないと考えている。ところが今回つくった下半身が上半身を捜すという怪談は、実は下半身は三村先生によって持ち去られていたという身近でショッキングな事件が真相だったため、このままではいずれ忘れ去られてしまう。それを嫌った四ッ谷先生は、今度は持ち去られた下半身を上半身が捜して歩き回るという怪談をつくりあげるのであった。

 このあらすじが正しいのならば、終盤は間延びしているのではなく、一応ちゃんとオチに向かって進んでいるんですよね。いやーしかし、それを読み解くのは正直難しいですよ。少なくとも私は、一読しただけではとてもとてもわかりませんでした。

 作者は2008年に月例賞で佳作を取ったのが最初? のようですし、まだまだこれからでしょう。オリジナリティのある設定とストーリーだとは思うので、今後はそれをもっとわかりやすく表現できればいいんじゃないのかなー、と思います。

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2009/05/12

キャプテン

Img315 ちばあきお 著。月刊少年ジャンプにて1972年~79年にかけて連載、単行本全26巻完結。

 墨谷二中に転校してきた二年生、谷口タカオは、そこでも野球部へと入部するが、野球の名門青葉学園から転校してきたというだけで、プレーも見ないうちからとんでもなく野球がうまいのだと思われてしまう。だが実際には、確かに青葉学園の野球部に在籍してはいたものの谷口は二軍の補欠であり、守備も打撃も人並み以下なのであった。谷口は何度もそのことを皆に言おうとしたのだが、誤解は一向に解けることはなく、逆に期待は高まるばかり。困り切った谷口だったが、父親のアドバイスをきっかけに、それならば青葉のレギュラーとして通用するくらい腕を磨こうと決意、特訓を開始する。だがそんな急にうまくなるはずもなく、ノックも満足に取れないまま迎えた三年生の引退日、なんと谷口は新キャプテンに任命されてしまう。自分は青葉の二軍の補欠だった、キャプテンにふさわしくないと元キャプテンに伝える谷口。だが元キャプテンは、そんなことは当然のように見抜いており、その上で影の努力によって実力を身につけた谷口を、新キャプテンに任命したのだった。

 まさに王道直球の野球マンガ。ジャンプのキャッチフレーズ、「友情・努力・勝利」を地でいく作品ですね。30年以上前の作品であり、素質も才能も無い谷口が努力に努力を積み重ねてうまくなっていく、という、今時あまりないストレートなスポ根作品ではありますが、今読んでみても全然面白いです。たしかに絵柄やセンス、作品内の風景などが古くさいのは当たり前ですが、本質的な部分が面白いというのは、こういう作品のことを言うんでしょうね。ただ勝つだけじゃなく、チームワークがうまくいかなくて敗けることもあったりと、痛快なだけではない作品ですが、それでも一読の価値はあると思います。

 特筆すべきことの一つめとして、実はこの作品の主人公は谷口ではなく、谷口を筆頭とした「墨谷二中野球部歴代キャプテン」である、というのがあります。なので、谷口の出番は最初の5巻までしかなく、そのあとはほとんど顔を出しません。こういった、主人公が入れ替わっていくストーリーマンガって、今でもそう多くはありませんよね。新キャプテンは今まで部員だったサブキャラがなるわけで、作品内時間が経つにしたがって主人公が自動的に変更されていくシステムというのは、非常に面白いものなんじゃないかと思いました。

 もう一つは、この谷口はすぐにキャプテンの舞台からはいなくなってしまうのですが、今度は高校生になった谷口を主人公とした一種のスピンオフ作品「プレイボール」が週刊少年ジャンプで連載された、ということです。内容については近日中にレビュー予定なのでここでは省きますが、キャプテンの連載時期が1972年~79年、プレイボールが73年~78年ということで、スピンオフ作品としても同時連載とか正直ありえないですよね。まったくもってたいしたものです。それだけに、作者がその後自殺したという事実は、本当にショックでした……。

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