2009/12/08

ダブル・フェイス

Img522 細野不二彦 著。ビッグコミックにて2002年より連載中、単行本19巻まで以下続刊。

 街の小さな消費者金融、月影ファイナンスに勤務する春居筆美は、普段はうだつのあがらない手品好きのサラリーマンだが、その正体は実は月影ファイナンスのオーナーであり、裏社会にその名を知られる魔術師、Dr.WHOO(ドクター・フー)でもあった。彼は街金での営業業務の傍ら、金銭的にもそれ以外でも借りをつくってしまったことで困っている人々を見るや、その債権が有効か無効かを判断。そしてひとたび無効と断じれば、Dr.WHOOとしてのマジックの腕前を巧みに使い、不良債権は本人に代わって必ず回収するのだった。

 そんな感じの、ダークヒーロー系のヒューマンストーリー。ストーリーの随所にトリックやイリュージョンが使われるのが特徴。ストーリーはしばらくは単発での勧善懲悪が続きますが、そのうちにDr.WHOOがかつて在籍し、現在も形式上は残っている? 黒淵機関と、その対抗組織の戦い、という流れになっていきます。法では裁けないような悪を裁く、というテーマに外れはないでしょうし、リアルの社会情勢を組み込んだ話作りにもなっているため、読んでいて気分が晴れる作品です。現実はこんなにうまくいくはずないよー、という部分は確かにありますが、それはそれ、創作作品なわけですから、問題ないでしょう。

 正直この作品は、トリックを色々考えなければならないという部分もあって、こんなに長期連載になるとは思っていなかったのですが、今や立派な代表作の一つになってしまいましたね。さすがにストーリーは黒淵機関絡みばかりになってしまいましたが、もう締めに入っているとは思いますし、来るべきラストに向けてどうなっていくのか、楽しみに読み続けたいと思います。

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2009/10/14

畳の上のミクロ

0384321601 吉木まさかず 著。週刊少年チャンピオンにて2009年連載、完結済み。単行本1巻まで以下続刊。

 クラスメイトの剣崎拓海が巨漢の同級生を鮮やかな内股で投げ飛ばすのを見て、柔道ならば小さくても強い男になれるかもしれない、と思った背の低い中学1年生、三黒充雄。彼は早速柔道部へと入部するが、正規練習後の1年生同士での乱取りで、初心者ということもあってか体のいい投げられ屋として扱われてしまう。勝ち抜けという圧倒的に不利なルールのせいもあり、その日は1時間で100回も一本敗けしてしまった三黒だったが、だが彼はくじける前に、こう考える。今日は100回投げられた。でも明日は99回に減らすことができれば、1回分強くなってるってことなんじゃないか、と。そして2年後――3年生になった三黒は、まだ投げられ屋をやっていた。だがその日は、ついに1時間で10回しか投げられないという新記録を樹立する。そして翌日、初の一桁を狙う三黒だったが、9回投げられた後の相手は、昨年内股のみで県2位までのし上がったあの剣崎拓海。圧倒的実力差を前にしつつも、2年間で8000回以上は投げられた内股をこらえ続けた三黒は、ついに剣崎の内股を内股すかしで返し、初の一本を取る……!

 そんな出だしの、努力系柔道マンガ。三黒=ミクロは、攻めに関しては未だにかなりの素人なのですが、2年間の投げられまくった経験から、相手の攻めには敏感に反応できる、というタイプの主人公です。初心者が強さの片鱗を見せ始めるエピソードとしては真っ当な物ですし、連載開始当初はこれは面白そうだなー、と思いながら読んでいました。ところが、その後の展開もけしてつまらないわけではなかったのですが、イマイチ盛り上がらないまま、先週号で打ちきりとなってしまいました……。その要因ですが、私は展開の遅さなんじゃないかと思っています。上記あらすじのように強さの片鱗を見せたミクロは、その後の大会で初の1勝を上げ、続く2回戦でも全国区の実力者相手に逆転勝ちをするのですが、そこまでやって全19話。序盤の展開としては、ちょっとゆっくりすぎに感じました。まるで長期連載を終えた後の大御所の新連載のようなペースでしたね。構想としては、この後高校編へ移っていくつもりだったんでしょうが、中学編を2巻分くらいで終わらせるべきだったんじゃないかなー、なんて思っています。このあたりのさじ加減は、作者がこれが初連載作品らしい、ということにも絡んでるんでしょうねー。

 すでに書きましたが、素人が強くなるという設定部分も納得がいきますし、話自体もけしてつまらないわけではなかったので、作者の次回作にはぜひぜひ期待したいと思います。

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2009/08/19

第六大陸

Img415 原作・小川一水、漫画・吉祥寺笑。FlexComixネクスト にて2008年より連載中、単行本2巻まで以下続刊。

 サハラ砂漠に大規模緑化基地、南極大陸にウラニウム抽出基地、ヒマラヤ9合目に観測基地、そして2025年、水深2000メートルの海底に海底都市「ドラゴンパレス」を建設した後鳥羽総建に、世界屈指のレジャー会社を傘下に持つ桃園寺グループから、新たな仕事の依頼が入る。地上とドラゴンパレスを繋ぐ交通艇リヴァイアサンで起きたトラブルを収束させた手際から、桃園寺グループ会長とその孫娘、妙に見込まれた起動建設部所属の青峰走也は、次なる建設予定地の現地調査に妙と共に行くことになったのだが、その行き先とは、ドラゴンパレスの遥か上空……そう、なんと次の建設予定地とは、月であった。

 そんな出だしの、近未来宇宙開拓物。この作品はハヤカワSF文庫より刊行中の小川一水「第六大陸」のコミカライズ作品であり、私は原作及び原作者のファンでありまして、感想もそれに則ったものになることをお断りしておきます。

 月を6番目の大陸と位置づけ、そこに10人以上が滞在できる施設を建設し、運用する。というのが原作の初期目的であり、このコミカライズ版も、今のところはそれに沿った展開になっています。まず中国の月面基地へ行って現地調査を終え、単行本2巻では新型エンジンによる輸送コスト削減を図っている段階ですが、なんというか、その……原作とこの漫画版とでは、重視してる部分が明らかに違うんですよね。漫画版はかなり劇場型ですが、原作はもっとずっとストイックですよ。文字媒体である小説と視覚媒体である漫画ではそれぞれ表現するに適したシーンがあるのは当たり前ですが、だからといって視覚表現のために意味を変えてしまうのは正直どうかと思います。特に2巻の月面基地からの帰還はひどいですね。SF考証的な部分もひどいですが、中国人宇宙飛行士の扱いもひどい。中国に喧嘩売ってるのかなー。

 近未来SFとして原作は抜群に面白いですし、このコミカライズ版にも頑張って欲しいのですが、少なくとも現在のところは、見せ方が間違ってるんじゃないかなー、という感じです。トータルで評価される小説と1話1話で評価される漫画とでは違う、というのは確かにわかりますのが、根底に流れる面白さの基となる部分は同じのはず。単行本は買い続けますので、今後の展開に期待しています。

 あと今回調べていて知ったのですが、なんと小川一水の他作「復活の地」もコミックフラッパーにてコミカライズが開始されているそうです。遥か未来だけど文明は衰退していて文化レベルは20年前の地球、という感じのとある惑星が舞台で、その首都で大地震が発生し、壊滅した都市の復興を図る、という感じの内容なのですが、これもまた原作は非常にストイックな展開のお話。まだ漫画版を読んではいませんが、正直、今のところは不安です。面白いといいんだけどなー。

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2009/07/12

逮捕しちゃうぞ

Img368 藤島康介 著。モーニング・パーティー増刊にて1986年~92年にかけて連載、単行本全7巻完結。

 辻本夏美と小早川美雪は、墨東署交通課勤務の警察官。夏美は抜群の運動神経と度を超えた怪力を武器に、美雪はメカニックとしての腕前と卓越したドライビングテクニックを武器に、警察官としての職務に勤しみます。今日も二人はターボチャージャーとニトロ噴射装置を搭載したホンダ・トゥデイのミニパトに乗り、駐車違反に速度オーバー、信号無視など取り締まりまくりつつ、日々を謳歌しているのです。

 そんな感じの、婦警さんのペアを主人公とした、アクションコメディ。リアルだと法の眼をかいくぐって取り締まれないような相手を、強引に成敗してしまう、というハチャメチャ警官系です。こういう作品は現実と虚構の境目を如何にうまく取り扱うかが肝だと思うのですが、上手くいっている良い例と言えるでしょう。古い作品ですので現在の道交法と違う部分がけっこうありますが、今読むとそれすら味に感じてしまうのが不思議ですね。何度もアニメ化されていますが、それが納得できるくらいの面白い作品でした。時代が変わっても警察官というネタは普遍でしょうし、短期集中連載での新作とかまた描いてくれたりしないのかなー。

 作者の代表作は、この作品もそう言えるとは思いますが、アフタヌーンにて連載中の「ああっ女神さまっ」の方が有名でしょうか。連載開始からすでに20年が経過とものすごい長期連載になっていますが、うーん、ここ最近の女神様は、ちょっと私には目が怖くて読めないんですよねー(涙) 昔の絵柄に戻ってくれないのかなー。しょんぼり。

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2009/05/31

たかまれ! タカマル

Img332 近藤るるる 著。週刊ファミ通にて2002年~08年にかけて連載、単行本全17巻完結。

 総生徒数3117名を誇る華音高等学校に入学した小笠原隆丸の夢は、ゲーム雑誌の編集者になること。部活選びをしているときに偶然見付けた「編集部」という文字に惹かれ、タカマルは「SML編集部」という部の扉を叩きますが、なんと入った途端に手錠で壁に繋がれてしまいます。さらにはなんの説明もないまま入部しないと外してやらないと脅されてしまい、結局入部届を提出することになるのですが、なんとこの部はゲーム雑誌を本当に作っている部なのでした。第一印象は最悪だけれど、ココならボクの夢を叶えることができるんじゃ……。こうして一抹の不安を覚えながらも、タカマルのSML編集部員としての幕は開けたのでした。

 そんな出だしの、雑誌編集部を舞台とした学園ラブコメディー。SMLとは、「Soft Maker Lovers」の略です。まず雑誌編集部分ですが、高校生が部活で商業誌をつくるというリアリティは別として、雑誌編集部というものを知らない身としては非常に興味深く、また面白く読めました。ストーリーを破綻させないための都合の良すぎる展開も多々ありますが、そういう部分はそういうものだと思って読んだ方がいい作品ですね。こんな高校生いるわけない、とか、こんな展開ありえない、とか、そんなことは思っちゃダメです。最終回付近の展開もツッコミ禁止。

 そしておそらくこの作品のキモとなるラブコメ部分ですが、これがとても良い出来でした。だからこそ、この作品が週刊誌で長期にわたって連載し続けられたんだと思います。そんな中の一番の功労者は、やはりヒロインの座を見事奪い取った幸地ゆきえでしょう。スレンダーな初期ヒロイン、香椎綾に対し、ゆきえさんはぽっちゃり系とどう見ても分が悪く、さらに二人もと性格は良かっただけにどうなっちゃうのかなー、と心配な思いもありましたが、個人的には非常に満足な展開及び決着の付け方でした。ヒロインが移行していく展開にまったく無理を感じなかったため、もしかしたら最初からゆきえさんがヒロイン予定だったのかもしれませんが、でも1巻の表紙に香椎綾は出ているのにゆきえさんが出てないんですよねー。やはりきっとキャラが勝手に動いて、奪い取ったのでしょう。私はヒロインが変わっていく事に対して容認派のつもりですし、これはこれで十分良かったです。

 作者は現在、同誌にて「テラオ」を連載中。ゲームソフトを現実世界に影響させながら再生することができるロボット、テラオが主人公のお話ですが、今のところはまだ始まったばかりで、今後どういった展開にしていくのかが興味深いところです。そして作者の作品のお約束として、このテラオにもタカマルに出てきたSML編集部副編集長、蓮沼莉子が出てきます。タカマル連載開始が2002年で当時高2で16歳として、テラオ開始時が26歳なので、テラオは近未来マンガという位置づけなのかもしれませんね。ロボット出てくるし。いや、単なる想像ですが。

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2009/05/21

大願成就 こももでしょ!

Img323 まるのすけ 著。COMIC SEED!にて2005年~06年にかけて連載、単行本全1巻完結。

 UMA好きの小学5年生、春菜こももの願いは、あこがれている名前も知らない男の子との恋愛成就。今日も祈願のために近所の神社へとお参りにいきますが、なんとそこで神になるための修行中という不思議な喋る犬と出会い、神力という不思議な力が使えるようになります。神力によって善行を積めば自分の一番の願いも叶うと聞かされ、やる気を出すこももでしたが、なんと神力を使うためには、お賽銭を入れて杖にパワーを貯めなければならないとのこと。しかも貯まったパワー以上の神力を使ってしまうと、その場で身ぐるみをはがされて、ハダカになってしまうのです……。

 そんな設定のドタバタコメディ。こももが神力を使ってドタバタを引き起こし、最後にはハダカになる、というわりとお約束作品ですが、神力が賽銭によって貯まって、神力が足りなくなると服が差し押さえられる、という設定はちょっと納得してしまいました。名前も知らない男の子との恋愛成就ネタは一応引っ張るんですが、善行を積むと云々という設定はかなり放置されており、構成はけっこう甘いなーと思ってしまいましたが、1話1話はドタバタコメディとして十分面白かったです。

 作者は他に「ごうがいっ」という、新聞部を舞台にした作品だったかな? も描いていましたが、現在は商業活動はしてないのかな? ちょっと調べた感じではわかりませんでした。絵もろりぷにでかわいいし、ほのぼのマンガで十分いけると思うので、いつかまた新作を読んでみたいです。

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2009/05/04

大平面の小さな罪

Img307 岡崎二郎 著。ビッグコミック増刊号にて1996年~98年にかけて不定期掲載、単行本全1巻完結。

 広告代理店に勤めるADの宇田川は、ある日自分の作った広告図案から一人の女性が出てくるという事態に遭遇する。平面管理委員会行動局員00818、通称セーナと名乗る彼女の話によれば、全世界の平面はすべて彼女の所属する組織の管理下にあり、彼女たちの力によって、平面は見た目を変えたり力を持ったりするのだという。その証拠に、セーナは紙に書いた「あ」という文字を「阿」と見えるように、宇田川の目の前で調整してみせる。それは、広告代理店に勤める宇田川にとって、大きなビジネスのチャンスであった。人間界でリッチで楽しい生活がしたいというセーナと手を組み、宇田川はさっそく独立すると、まずはビル全面を広告にするという仕事を手がける。それは素晴らしい反響を呼び、宇田川は次々と仕事を受注。仕事はどんどんと増えていき、それに伴い収入も加速度的に増加。宇田川は充実した毎日と大金を手に入れ、セーナは高級な服を着て毎日パーティーをやるといった、享楽的な生活を手に入れる。こんなに派手にやると委員会にばれるのではないかという危惧もあったが、紙幣や有価証券等を直接操作するということさえしなければ大丈夫というセーナの言葉通り、すべては順調に進んでいった。実際、その部分では、最後まで委員会にばれることはなかった。だが、平面ならば完璧に操作できるセーナではあったが、人の心まで操作することはできるはずもなく、やがて二人は少しずつすれ違っていく……。

 世の全ての平面を管理する、平面管理委員会、という架空の設定を用意した上でのミステリ風味作品。上のあらすじは第1話のものですが、このあとも新たな平面が操作される事件が発生し、宇田川とセーナがその原因究明に動く、といった流れになります。話自体も岡崎二郎節炸裂という感じで非常に面白いのですが、特筆すべきは、平面を自由に操作できるというその能力。これってあれですよね、もし現在この能力を使えるなら、痛車や痛バイク、痛キーボード等がもうそれこそ自由自在に(だまれ

 セーナの浅慮だけど誠実な性格も、今で言えばフツーにツンデレになるでしょうし、ある意味時代を先取りしすぎた作品と言えるのかもしれません。いや、先取りしたおかげで、痛車とかの変なネタを使わなくて済んだと言えるんでしょうが……。

 これは問題点というわけでは無いのですが、あえて一つだけ言うとすれば、作者の作品はすべてSF短編集の「アフター0」に組み込まれてしまって問題が無いんですよね。この作品も、「アフター0 平面管理委員会編」とかなっていても、全然違和感が無かったりします。まったく問題は無いのですが、これは短編集が代表作であるという作者ならではの事例なんでしょうね。

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2009/04/26

ダイヤモンド

Img298 青山広美 著。ビッグコミックスピリッツにて1998年~99年にかけて連載、単行本全8巻完結。

 ヤクザの下っ端ながらカツアゲも満足にできない能なしのお人好し、種田恒夫は、自らの浅慮な行動から誤って対抗組織、般若組組長を拳銃で撃ち殺してしまう。生まれ変わったら今度は誰かの役にたつような人間になりたい。種田はそう思いながら、大好きだった母親に棄てられた思い出のドーム球場で自殺しようとするが、外野席にいたところを東京フェニックスの若き4番、童子秀巳の放ったホームランボールが直撃。自殺は失敗し、種田は逮捕、懲役18年の実刑判決を受け、投獄されてしまう。それから五ヶ月後……。般若組の報復を恐れて独房で一人震えていた種田は、突如現れた見知らぬ男たちに拉致されてしまうが、連れて行かれた先はなんと、あの思い出のドーム球場だった。「今日からここがお前の監獄だ」 監督を名乗る男はそう言うと、種田に野球のバットを手渡す。それは、過剰防衛で誤って浮浪者を殺してしまった東京フェニックス4番童子秀巳の影武者としての、種田恒夫の物語の始まりであった。

 設定や展開にちょっと荒唐無稽なところのある、プロ野球を舞台としたヒューマンドラマ。見た目がそっくりというだけで影武者に仕立て上げられたずぶの素人が、たった2週間でプロの球を打てるようになり、その後は三塁守備まで機敏にこなしてオールスターまでにホームラン35本を打ってしまうという、それだけ聞くとリアリティがあるとはとても言えないような作品。ですが、そんな無茶な設定や展開がむしろアリだと思ってしまうくらいの、最高に面白い作品でした。

 プロという世界に入り、ただ好きというだけでは野球をやっていられなくなった人たち。そんな彼らが、今まさに最高に楽しんで野球をやっている種田と接し、押し殺していた自分の本当の想いを取り戻す。そういったテーマがこの作品の根本には流れており、それがそのままこの作品がこれだけ面白い理由にもなっていると思います。199勝投手浜野正平編や、ナックルボーラー山田一男編、メジャー帰りのフラッシュ早川&不肖の弟早川勝次編等の最高に面白くて格好いいエピソードには、例外なくこのテーマが含まれています。また、最終回、童子がいばらの道を選んだ理由も、自分の本当の想いに従う、というテーマに基づいた結論と言えるでしょう。

 今回はいつもにまして断定口調ですが、もうそれだけ私がこの作品を好きなんだという理由だと思ってください。最終回は読んでいて泣けました。今回久しぶりに読み返して、やっぱりうるっと来ましたよ。読むことができて幸せだとまで思えた作品は少ないですが、私にとってこの作品は、間違いなくそのうちの一つです。

 作者は現在、週刊少年チャンピオンにて連載中の「ギャンブルフィッシュ」の原作をやっています。確かに画はクセがあるし今風でもないので、少年誌では原作の方がいいのかもしれませんね。ギャンブルフィッシュは波はありますが総合的には面白いですし、そろそろ来るであろうクライマックスに向けて今後とも期待していますが、また作者本人の画での作品を読みたいなー、と思っています。

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2009/04/20

探偵儀式

Img291 原作・清涼院流水、原案脚本・大塚英志、漫画・箸井地図。エース特濃にて2003年連載開始、現在は月刊少年エースにて連載中。単行本5巻まで以下続刊。

 殺人事件は必ずJDC立ち会いのもと捜査を進めるべし。民間の探偵を多数登用した特殊法人、日本探偵倶楽部(JDC)に所属する龍宮城之介がその日に立ち会った殺人事件は、すぐに容疑者も逮捕され証拠も揃っているという、なんの謎も無いものだった。だが、竜宮が立ち去った後にやってきた3人の少年少女たちは、隠されていた謎を看破、真犯人を見つけ出すことに成功する。彼らは自称NGO法人のボランディア探偵倶楽部所属の探偵であり、リーダー格の少年の名前は、伽藍堂天晴と言った。そしてその頃、竜宮を含むJDC所属の探偵99人に、探偵開祖と名乗る者からの招待状が続々と届き始めていた。それは伽藍堂が潜入することとなる、探偵儀式という大事件の始まりであった……。

 ミステリーと思わせておいて、これは探偵をモチーフとした単なるエンターテインメント作品ですね。作中にはたくさんの探偵が出てきますが、「曖昧な理論から核心に辿りつく能力」とか「死体にキスして死者の名前や犯人を知る能力」等、トンデモ能力をみな持っています。トンデモ能力を使ってトンデモ事件を解決するということで、読者の推理の余地なんてまったくありませんので、ミステリーとは言えないでしょう。そんな状態ですが、物語の根幹には「探偵儀式」という10年前の不可思議な事件があり、それがまた繰り返される、というしっかりとした筋のあるものとなっています。登場人物の能力や謎について「なんじゃこりゃー」とあきれるのではなく、そういうものだと思いながら読んでいくと、意外に楽しめる作品だと思います。

 今回調べていて知ったのですが、この作品は原作者である清涼院流水の書く小説、JDCシリーズと同じ世界観を持っているらしいですね。そしてJDCシリーズはもう何冊も刊行されているらしいので、となればこの作品のラストもぐたぐだになるということは無いでしょう。どんな結末が待っているのかは想像もできないししても無駄なんでしょうが、楽しみにしています。

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2009/03/12

ダンジョン・マスター

Img248 栗橋伸祐 著。月刊コンプティークにて1991年~92年にかけて連載、全1巻完結。

 かつて、大魔道士グレイ・ロードは、「炎の杖」と「呪文の力」を使い、太古の昔に生命を創造したと言われる「力の石」の力を蘇らせようとするも、失敗。世界は混乱に陥り、グレイロード自身も、秩序を司るロード・リブラスルスと混沌を司るロード・カオスに分離してしまった。その後、ロード・リブラスルスの呼びかけに応じ、数多くの勇者が炎の杖を求めてダンジョンへと挑んだが、そのすべてがロード・カオスの前に力尽きてしまう。師であるグレイ・ロードが分裂した時に、その影響で実体を失ってしまった弟子、セロンは、ロード・リブラスルスの言いつけ通りに4人の勇者を蘇らせ、再びダンジョンへと導くこととなる。だがその一方、セロンはロード・リブラスルスの中に、グレイ・ロードとは違う危険な物を感じ取っていた。

 1987年に発売されたPC用RPG「ダンジョン・マスター」のコミカライズ作品です。あらすじは上のような感じですが、ゲームとしては24人の勇者から4人を選び、ダンジョンに潜って炎の杖を捜す、というものです。作中でもその流れを踏襲し、ゲームのラストのネタバレとなる部分までしっかりマンガにしているのが、今考えるとすごいなー、と思いました。ただそのおかげで、ゲームをやったことがない人や、内容を忘れてしまった人でも話が最後まで理解できるわけで、それはそれで良かったかな、と思っています。

 ゲームの事をちょっと語りますが、現在ではFPS+RPGと表現できるであろうゲームシステムは、当時としてはものすごく斬新でして、コマンド形式のRPGに比べ段違いの緊張感を持ってダンジョンに挑んだものでした。通路を曲がった先にスケルトンがいたので、出てくるのを待ちかまえていたら、回り込まれて後ろから不意打ちされてちょーびびった、というのを私はきっと一生忘れないと思います。このあたりは、寺島令子「墜落日誌」でも色々ネタにされていて、面白おかしく読んでいたものです。いやー、古き良き時代の思い出ですね。

 作者の栗橋伸祐ですが、現在はMC☆あくしずにて「黒鉄ぷかぷか隊」を連載中。艦長以外の乗組員が全員女性という、太平洋戦争時の通商破壊艦を舞台とした、わけのわからない(褒め言葉)架空戦記マンガです。何年経っても変わらない絵柄とスタイルだなー、と思いつつも、続きを楽しみにしています。

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