2010/01/17

とある飛空士への追憶

Img559 原作・犬村小六、作画・小川麻衣子。ゲッサンにて2009年より連載中、単行本1巻まで以下続刊。

 中央海をへだてた神聖レヴァーム皇国と帝政天ツ上という大国同士の戦いは、天ツ上の開発した戦闘機「真電」の出現によって一変する。それまでは戦況を有利に保っていたレヴァームだったが、制空権を奪われ天ツ上本土領地であるサン・マルティリアも爆撃を受け、サン・マルティリアを管掌するディエゴ・デル・モラル公爵が死亡するなど、状況は悪化の一途をたどっていた。そんな中、デル・モラル空挺騎士団エースである青年、狩乃シャルルは、軍司令部より極秘指令を受ける。それは、死亡したディエゴ公爵の一人娘であり、半年後にレヴァーム皇子との婚姻を控えたファナ・デル・モラル嬢を、複座式の偵察機でレヴァーム本土へ送り届ける、というものであった。レヴァームと天ツ上との混血児として生まれ、9歳の時には孤児となるなど不遇な人生を歩んできたシャルルだったが、実は彼は幼き日に偶然ファナに出会い、生きる希望を貰ったことがあった。もし天ツ上に狙われているとも言われるファナをこの苦境から救い出すことができたなら、いつ死のうとも後悔せずに済むのではないだろうか。そう考えたシャルルは、ファナを連れて単機レヴァーム本土を目指すことを決意する……。

 そんな出だしの、飛空挺を舞台とした冒険ファンタジー。同名のライトノベルのコミカライズ作品です。お姫様との二人旅、という設定はまぁありがちだとは思いますが、展開や表現がラノベにしては非常にストイックで、原作はなかなか面白かったですね。ネット上では評判になってましたし、読んだ方も多いんじゃないでしょうか。そしてこのコミカライズ版ですが、全体的に原作に忠実で、ストーリー的には安心して読めるつくりになっています。そしてコミカライズの利点である視覚的な部分ですが、個人的には成功してるんじゃないかと思います。特に二人で飛び立って、ファナの表情が出るようになってからがいいですね。ファナは元々は感情を押し殺した表情を持たないお人形というキャラで、作中で徐々に感情を表すようになっていくわけですが、文字だけでは物足りなかった表情という部分をこのコミカライズ版では見事に補填していると言えると思います。こうなると、2巻以降の展開になる天ツ上空軍との戦闘や、来るべきエンドシーンにも期待が持てるというわけではありますが……ここに一つ、不安要素があります。それは、今作は映画化が決定しているということ。

 アニメなのか(無いとは思いますが)実写なのかはわかりませんが、ファナの表情を視覚的に表す、という利点がコミカライズ版だけのものではなくなってしまうのは確実です。そしてこれはまだ絶対ではありませんが、コミカライズ版連載中に映画版が公開されてしまえば、話題は映画版にさらわれてしまうのは必死で、コミカライズ版は本当にオマケ程度の扱いというか、映画版の宣伝材料の一つ程度になりかねません。個人的にはそれは非常に悲しいので、なんとか作画担当の小川麻衣子には、終わってみればコミカライズ版も素晴らしかったと世間に言ってもらえるよう、頑張ってもらいたと思っています。

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2009/12/12

ドラゴンクエストモンスターズ+

Img531 吉崎観音 著。月刊少年ガンガンにて2000年~03年にかけて連載、単行本全5巻完結。

 勇者になることを夢見て、日々ひのきの棒でスライム退治を繰り返していた少年、クリオの前に、ある日突然見たことのないモンスターがあらわれる。ふわふわもこもこで凶悪そうには見えないそのモンスター、わたぼうに、ボクらの世界を助けに来て欲しいと言われたクリオは、当然のように即決。自前の勇者装備と木の剣を手にし、わたぼうに連れられて異世界、タイジュの国を訪れるが……実はクリオは勇者としてではなく、モンスターマスターとしてこの地に呼ばれたのであった。モンスターに対抗するため、モンスターの力を借りて共に戦う職業、モンスターマスター。かつてこの国はテリーという一流のモンスターマスターがいたことによって守られていたが、彼が消えてしまったことで加護が失われはじめ、野生のモンスターによる襲撃を受けてしまっているのだという。当初その申し出を断ろうとしていたクリオは、モンスターマスターのかっこよさを目の当たりにし、自分も一流のモンスターマスターになると決意するが……。

 ゲームボーイ用ソフト「ドラゴンクエストモンスターズ テリーのワンダーランド」のクリア後の世界を舞台としたモンスターアクションバトル。実は私はゲームはやっておらず、作者の名前でこの作品を買ったので、ゲームとリンクしている部分の設定等はあまりよくわかっていません。ストーリーは、テリーがいなくなってしまい、彼を捜すための新しいモンスターマスターとして選ばれたクリオが、旅のとびらを通じて他の世界を旅していくうちに、隠された恐るべき真実に気付いていく……。という感じなのですが、この他の世界というのが、ドラゴンクエストⅠの世界だったり、Ⅱの世界だったりと、他のドラゴンクエストシリーズとクロスオーバーしているのがポイント。特にⅡクリア後の世界編はなかなかシビアで、クリオはローレシアの王子と出会うのですが、彼は破壊神シドーよりも力を持った存在として人々に恐れられた結果、国を棄て各地を放浪している、という感じの、ちょっと陰鬱な展開となっています。と、ここまで書いたわけですが、果たしてこの設定がマンガオリジナルのものなのか、ゲームの方でも登場しているものなのかが私にはわからないので、もし何か根本的に間違っていても許してください(弱気

 その他には、ゲーム自体にはモンスター同士の「配合」という要素があるらしく、マンガではそれを超えた「邪配合」という要素があったり、テリーがその邪配合を極めようとしている? 敵役として出てきたりと、それなりに燃える展開ではあったのですが……残念ながらそのあたりの決着がつくことは一切なく、様々な伏線も回収できないまま、Ⅱの世界編終了後にあえなく打ち切られてしまいました。うーん、このタイミングで打ち切るって、なんでだったんだろう? 当時は「ケロロ軍曹」で売れ始めていた頃だったと思うので、スクエニ側から切る要素は無いと思うんだけどなー。もしかしたらケロロが忙しくなったことで、作者の方から終わりにしたとかだったり? まったく根拠はありませんが、まだその方が納得できそうです。もしくは版権絡みなのかなー。

 ドラゴンクエストはナンバリングタイトルしかプレイしたことがない私でも、それなりに楽しめる作品でしたので、おそらくはテリーのワンダーランドをプレイした人なら、もっともっと楽しめると思います。正直今からゲームボーイ版、もしくはリメイクのPS版をやる気にはなれないので、できたらDSでリメイクとか出てくれないかなー。いやでも、出ても時間的にやるかどうかはきびしいですが……。

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2009/12/03

トランジスタ・ティーセット ~電気街路図~

Img517 里好 著。まんがタイムきららフォワードにて2008年より連載中、単行本2巻まで以下続刊。

 祖父が残した店を継ぎ、秋葉原無線商店街で小さな電子部品屋を経営する女子高生、半田すずがある朝目を覚ますと、シャッターの前は正面の店の開店準備荷物で埋まっており、店が開けられないという状態になっていた。仕方なく商店街会長の孫娘、須田さいりと共に秋葉原をぶらついていたすずだったが、食事中にかかってきた店の前が片付いたという電話の声は、彼女にとある人物を思い出させる。そして慌てて店へと戻ったすずが見た物は、商店街に突如現れたあきらかに場違いなメイドカフェと、そこの店主でもある幼い頃に離ればなれになった幼なじみ、木場みどりの姿であった……。

 そんな出だしの、秋葉原を舞台とした日常コメディー。とは言っても電子部品街としての視点から秋葉を取り上げた作品であり、アニメ、ゲーム、マンガ、フィギュア等を主体とした昨今の主流をメインとした作品ではありませんので、萌え系マンガと思って読んではいけません。主人公の半田すずも、理工系の知識や情熱はありますが、萌え系の要素はほとんど無いと言う感じです。唯一あらすじにも出てくるメイド喫茶だけが現代風と言えるでしょうが、これも設定としてはどうやら裏があるようなので、やはり基本的には萌え系マンガではないと言えるでしょう。

 とまぁそこまでが私の分析というか感想なのですが、正直それにしては、初期のキャラや展開が、ちょっと媚びすぎだよなー、という感じなんですよね。工学系の女子高生から見た秋葉、というスタイルは面白いと思うのですが、それならもっと展開はストイックでいいと思うんですよ。幼なじみのメイド喫茶は、おそらくメインストーリーに絡んでいるのでこのままでいいとは思いますが、木場みどりや須田さぎりと言ったキャラたちの設定がもうちょっと抑えられていれば、もっと面白かったんじゃないかなー、と思ってしまいました。

 作者は現在、まんがタイムきららにて「うぃずりず」という4コマ作品も連載中。こちらはフツーの学園日常コメディ4コマという感じで、ひねっていない事もあってか気楽に読めます。しかし読み比べてみると、4コマには4コマのキャラの設定やストーリーの展開と言ったお約束があるわけですが、4コマではないトランジスタ~がそういった4コマのお約束にちょっと引っ張られてしまっているのかなー、という印象を受けました。トランジスタ~の設定を今から調整するのはもう難しいでしょうから、そのあたりは次回作で期待、という感じですね。

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2009/11/12

飛べ!イサミ

Img497 長谷川裕一 著。1995年~96年にかけて、書き下ろし単行本にて発行、単行本全10巻完結。その後、続編となる「飛べ!イサミ ダッシュ」が、再び書き下ろし単行本にて1997年に発行、単行本全3巻完結。

 アメリカから日本にやってきたばかりの小学5年生、花丘イサミの家に、ある日クラスメイトの月影トシと雪見ソウシが忍び込んでくる。なんと二人は幕末に活躍した新撰組の子孫であり、見つかった古い地図に従って宝を探しに来たところ、イサミの家にたどり着いたのだという。同じく新撰組の子孫だったイサミは、トシ、ソウシと共に家の土蔵を捜索。そこでなんと、約100年前のご先祖様から、悪の組織黒天狗党と戦ってほしい、というメッセージを受け取る。だがそこに、突然黒天狗党が襲来。彼らは逃亡した花丘博士から超エネルギーの秘密を手に入れるため、娘のイサミを監視していたのであった。ご先祖様から託された武器、龍の剣によってその場を切り抜けたイサミは、トシ、ソウシと共にしんせん組を名乗り、黒天狗党と戦うことを決意する。そうすればいつか、行方不明の父に再び会えると信じて……。

 そんな出だしの、ボーイッシュなスパッツ姿の女の子が悪の組織と戦うという、ヒロインアクション。変身要素や戦隊要素、SF要素も有り。同名のアニメーション作品のコミカライズ版ですが、内容の差異は私はアニメ版を観ていないので不明。ストーリーの基本は、イサミたちがご先祖様の遺したからくりを使って、黒天狗党の企みを阻止していく、という感じなわけですが、なんというか、コミカライズ作品であることは間違いないんですが、これは作者の低年齢向けオリジナル作品だと言われれば信じてしまうくらいの、長谷川裕一テイストに溢れた面白い作品でした。特に終盤の展開は、もう作者のお約束と言っていいくらいのもので、スケールは一気に大きくなり敵味方が切り替わり、それでいて破綻せずに風呂敷を畳みきる、という見事なものになっています。

 そしてこの作品のすごいところは、単行本全10巻が、一月一冊のペースで書き下ろしで刊行された、ということですね。200ページ弱の書き下ろし単行本が毎月刊行されるって、ちょっと尋常じゃありません。さらに当時、作者は他にも月刊連載を持っていましたから、その生産量たるや空恐ろしい物があります。そんなことをさせたNHKもひどいとは思いますが(笑)

 現在の作者は生産量をがくんと減らし、連載は多分、「マップスネクストシート」1本のみ。そのネクストシートはとうとうキーとなるファーストシートが現れ、おいおいこれどうなっちゃうんだよ……と笑いながら言わずにはいられない展開となっています。作者曰く、毎月クライマックスとのことですが、ホントそんな感じです。ただそろそろ、また誌面での連載が読みたいなー、なんて思ってもいますので、新連載のほうも期待していますね。

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2009/11/03

トリフィルファンタジア

Img488 夜麻みゆき 著。月刊Gファンタジーにて2008年~09年にかけて連載、単行本全2巻完結。

 砂の海サンドマリンに囲まれた、オアシスの国オンファス。そこは人を疑うことを知らないような人たちが住む街で、しょっちゅう不思議なことが起こります。その街の片隅にある猫の居眠り通りで、トリフィルという名の小さなパン屋さんを営んでいるのは、ルナとルチルの姉妹とジェイドという居候。仲良く暮らす三人の元にも、遠くの街にいるルナとルチルの両親から不思議な香料が届いたり、水のお祭りという傘とタライが売れる祭事があったり、目隠しの塔という見たものに不幸をもたらす塔に夢の中で行ってしまったりといった、不思議な事が起こるのでした……。

 そんな感じの、ややメルヘンチックな異世界ファンタジー。ルナとルチル、ジェイドが主人公なのは間違いないですが、明確なストーリーがあるわけではない、オンファスの街で起こる様々な出来事を綴った物語集、という感じの作品です。コマ割りや表現方法などが非常に実験的で、面白いんですがちょっと同人臭さを感じでしまうのが玉に瑕。キャラクターの描き方なども頭身が低く線が少なくと、それを助長してしまっています。これが狙ってやっているのかどうかはちょっとわかりませんが、ただこの辺りはあくまで見た目の問題であり、内容自体はバッドエンドの無い心温まる物語集ということで、楽しく読むことができました。2巻最終話だけが若干毛色が違いましたが、最終話としてならこれも良かったですね。

 現在は次回作構想中と言うところなんでしょうが、次は一本大きな筋の通った、同じ異世界ファンタジーとかを読んでみたいなー、なんて思っています。

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2009/10/30

ToHeart

Img484_2 高雄右京 著。月刊コミック電撃大王にて1997年~99年にかけて連載、単行本全3巻完結。

 ――春。すべてが、新しい季節。だけど高校2年生になっても、通学途中で藤田家を訪問するという神岸あかりの日課は、変わることが無い。両親が仕事で家を空けているため、この家で1人で暮らしている幼なじみ、藤田浩之を今日も起こさなければならないからだ。だけど最近、昔と同じように「浩之ちゃん」と呼ぶと、彼はやめろと言う。確かに高校生にもなって、ちゃん付けで呼ばれるのは恥ずかしいのかもしれないけれど……それでも小さな頃から、彼はあかりにとってずっと変わらず「浩之ちゃん」だったのだ。そのことを伝えると、彼はあかりのことを子供の頃から変わらないなと言う。だけどあかりは気付いていた。彼女の浩之に対する想いは、子供の頃とは違ってきているということに……。

 そんな出だしの、同名のゲームを元とした学園ラブコメディー。まず簡単にゲームの説明をすると、プレイヤーは主人公、藤田浩之となって高校生活を送り、複数いるヒロインの中から一人と恋仲になることを目指す、といういわゆる恋愛アドベンチャーゲームです。最初にPCで18禁版が発売され、その後PSにて非18禁版が発売、アニメ化もされています。まぁ多分、こんな説明をする必要なんて無いくらい、有名な作品ですよね。マルチとか。

 そしてこのコミック版は、おおまかなストーリーはゲームのままですが、視点はメインヒロインであるあかりが基本となっています。浩之が他の女の子たちと接するのを近くで見ていて、徐々に自分の気持ちに素直になっていく……、という感じです。そして、ゲームに登場する攻略可能ヒロインは全員出てくるのですが、それぞれメインの話がちゃんと全員分用意されているというのがポイント。ところが、そういったファンサービス的な展開が逆にネックとなっており、各キャラの話を無理矢理1話で終わらせているものもあるため、物語の深みというか説得力がイマイチ足りなくなってしまっています。限られた連載期間で全キャラの話をやらなければならない、という制約を考えると致し方ない部分はあったんでしょうけどねー。ろりぷにむっちりな絵柄はゲーム版とはちょっと違いますが可愛いですし、そういった良い点もあっただけに残念だったなー、と思ってしまいました。

 そして、これが一番重要なわけなんですが……なんというかもう、私が一番好きな長岡志保の扱いが悪すぎますよ? 確かに元々人気は低いキャラなわけですが、ゲームならまだ主人公の悪友という感じで出番は多かったのに、このコミック版では出番すらほんのわずか。弱肉強食が世の常とは言え、なんとかしてよ超先生!(だまれ

 話を戻しますが、10年以上前の連載ということで、こういう形でのコミカライズしかできなかったんだとは思います。ただ、可能なら誰か一人にスポットをあてた外伝みたいな形で読んでみたかったなー、とどうしても思ってしまうような作品でした。

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2009/08/23

動物のお医者さん

Img419 佐々木倫子 著。花とゆめにて1987年~93年にかけて連載、単行本全12巻完結。

 高校3年生の西根公輝、通称ハムテルは、近道だからという理由でH大学構内を通過していたところ、ふとしたことから獣医学部の漆原教授に「キミは将来獣医になる」という言葉とともに、一匹のシベリアンハスキーの子供を押しつけられる。チョビと名付けられ西根家の一員となったその犬だったが、ある時血便をしてしまい、ハムテルがH大学付属家畜病院へ連れて行くと、そこで待っていたのはなんと病院長でもあった漆原教授。すったもんだの挙げ句かろうじて治療はしてもらったが、ハムテルは獣医に対し感動するどころか、自分で治した方が早いし確実だし安上がりだと考えてしまう始末。こうして心ならずも、ハムテルはH大学に合格したならば、その後は獣医学部へ進もうと決心するのであった……。

 そんな出だしの、大学の獣医学部の日常をコメディータッチで描いた作品。古めの作品ではありますが、知名度はかなり高いでしょう。上記あらすじは第3話までで、ハムテルがこの後獣医学部に入ってからが本編と言えると思いますが、やってることは別に変わりません。ネタとしては動物におけるあるあるネタが多く、舞台が獣医学部である以上専門的なネタも多いわけですが、私のような素人でも置いてきぼりになるようなネタはほとんど無く、終始楽しく読める作品でした。作品内で人と動物間の言葉は通じないわけですが、動物の心情はふきだし外で表現されており、その部分もやけに人間くさく、読んでいて楽しかったです。今回改めて読み直してみましたが、やっぱり面白いですね。ただ、大ゴマが少なくネームも多いため、読むのに時間がかかる点には注意しておいたほうがいいと思います。全12巻で、軽く半日つぶれました。じっくり読む系の作品だということですね。

 作者はこれまではずっと白泉社で仕事をしていましたが、この後小学館へうつり、「おたんこナース」「Heaben?」などを連載、完結済み。現在はビッグコミックスピリッツにて、地方テレビ局を舞台とした「チャンネルはそのまま!」を連載中。同じ一ツ橋グループとはいえ、集英社寄りの白泉社から小学館に移ったというのは、なぜだったんでしょうね。しかもその後白泉社ではまったく描いていないようですし、ちょっと気になってしまいます。まーでも、こうやって裏情報が気になるというのは、野暮ってものなのかなー。

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2009/08/16

トガリ

Img411 夏目義徳 著。週刊少年サンデーにて2000年~02年にかけて連載、単行本全8巻完結。

 親も無く、身寄りも無く、名前すらも無かったその少年が生きるには、欲しい物を他人から奪うという以外の道は無かった。食い物、金銭、「トーベエ」という名前、そして命と、あらゆる物を奪い続けた彼であったが、ついに16歳の時に役人に捕らえられ、衆目の下斬首刑に処されてしまう。ところが地獄へと落ちたトーベエの魂は、どれだけ罰を受けても改心することは無く、何度捕まっても再び脱走を企てるなど、そこでも一向に変わる様子は無かった。そして現世での300年が経った頃――地獄の首魁であるエマは、トーベエの前に現れると、一本の木刀を差し出してこう言った。この「咎狩(トガリ)」を使い、現世にて108日間で108個の罪を回収してくれば、お前の罪は消えるでしょう、と……。こうして108個の罪を集めるため、現世へと戻ったトーベエであったが、彼は知らされていなかった。今までも咎狩を手にした罪人は何人もいたが、全員が途中で命を落とすか、もしくは咎狩に呑まれてしまったのだということを……。

 そんな出だしの、伝奇アクション。罪を持っているのは悪意を持つ人間で、それらを倒すトーベエはけして正義の味方というわけではなく、より大きな悪意である、という設定です。決めゼリフは「お前の罪をよこせ」 教育を一切受けていないトーベエには、何が悪で何が悪じゃないのかがわかっていない、という部分があるわけですが、ヒロインである浅木いつきの一家と付き合っていくことで、徐々に人の心の温かさを知っていく、という成長物語でもあります。ただ、トーベエの悪意が弱くなれば、同時に咎狩の力も弱くなってしまうため、すごいさじ加減の難しい作品でもあると思います。中盤以降は、10年前の刑事だったいつきの父が殺された事件にも絡んでいる強大な敵が現れ、その一味と戦っていくことになり、どのように設定を破綻させずにラストまで持っていくのかと毎週楽しみに読んでいたのですが……罪を108個集めきることなく、志半ばにて打ち切られてしまいました。本当に残念です。ラストまでの構想はもうできてたと思うんだけどなー。

 面白い作品だったとは思うのですが、果たして少年誌での作品か? と聞かれると、やや疑問な部分は確かにありました。それを克服しようとした次作「クロザクロ」は、少年漫画らしい弱さを克服することをテーマとした作品でしたが、正直トガリほどの盛り上がりもないまま全7巻で終了、その後サンデーでは音沙汰無しだったんですが……goodアフタヌーンの最新号(5号)にて久しぶりの新連載「モチモチ」を開始とのことで、ホント良かったです。ただ、ちらっと絵を観た限りでは、なんかすごいポップな作品という印象を受けるんですよね。私はトガリの暗い部分を強調する作風が好きだったので、ちょっと不安なのも事実です。いや、もちろん読みますけどねー。

 あと一応、今回調べて知ったのですが、クロザクロからモチモチの間も、活動をしてなかったというわけでは無いらしいですね。アメリカの出版社で、バットマンの外伝? とか描いてたみたいですし、ヤングジャンプにボクシング物の読み切りとかも載ってるらしいです。全然知りませんでした。

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2009/08/09

となりのなにげさん

Img404 橘紫夕 著。まんがホームにて2008年より連載中、単行本1巻まで以下続刊。

 教科書を忘れてしまったり、カギを落としてしまったり、飲み物をこぼしてしまったりと言った、日常で起こるなにげないトラブル。そんなとき、なにげなーく助けてくれる彼女の名前は、なにげさん。本名不明、クラスも不明、そもそも生徒なのかどうかも不明だけど、学校内はもちろん、街の様々な場所で困っている人がいれば、いつのまにか手をさしのべているのです。時にはちょっと的はずれだったり、逆に被害が大きくなることもありますが、なにげさんの純粋な好意と優しさは、きっとあなたの心をなにげなく温めてくれることでしょう。

 そんな感じの、学園4コマ。口数は少ないけど困っている人に手を差し伸べすぐに去る、というなにげさんのキャラが非常に良く、もうキャラが完成した時点での勝利と言っていいくらいだと思いました。この、すぐに去る、というのが特にいいんですよね。4コマ目のオチの一パターンとして、親切を終えたなにげさんが「タッ」という擬音と共に走り去っていく、というのがあるのですが、もう最高です。ああ、私も、なにげさんになにげなく助けてもらって、お礼を言う暇もなく立ち去ってもらいたい……(聞いてない

 作者はこれ以前に、ハムスペ(ハムスター倶楽部スペシャルの略)にて「でかポメ」という作品を連載していたのですが、雑誌休刊、出版社倒産に伴いこの作品を芳文社に持ち込んで、なんとか連載を取った、ということらしいです。この作品がこれだけ私好みなら、他の作品もぜひ読んでみたいと思いますが、出版社が倒産している以上、通常の手段で手に入れるのはちょっと大変なのかもしれませんね。作者のHPで買えるみたいなので、買えるうちに買っちゃうのがベストなのかなー。

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2009/07/15

動物のカメちゃん

Img380 噌(口編に曾)西けんじ(現在は「そにしけんじ」) 著。週刊少年サンデーにて2000年~02年にかけて連載、単行本全5巻完結。

 飼い主、坂本明日香がUFOキャッチャーで遊んでいる間に、マルチーズのラッシーはペットショップ万華堂へと拉致されてしまう。だがそこに待っていたのは、ラッシーと言葉が通じ、人間とも会話ができ、二本足で歩いて甲羅を脱いだり着たりできるという、見た目は亀そっくりの不思議な動物、カメちゃんだった。このままだとペットショップで売られてしまうと察知したラッシーは、明日香の元に帰るため逃げだそうとするが、腹話術や変形を得意とし、さらにメールやホームページ、株価のチェックに余念なしというカメちゃんに、ペースを乱されっぱなし。果たしてラッシーは、実はゴールデンレトリバーが飼いたいという飼い主、明日香の元へと戻れるのでしょうか……。

 そんな感じの、擬人化されたカメをトリックスター的なポジションに置いた、ちょっとシュールなショートギャグ。カメちゃんと、カメちゃんによって迷惑をかけられる人や犬が主人公、というのが正しいですね。初期は上記のラッシーやゴールデンレトリバーのジョン、人間(高校生)の葉山雄三や烏丸正治と主人公は入れ代わり立ち代わりな感じですが、2巻途中から小学生の神田はじめが主人公となり、そこでようやく設定が固定されてそのままラストまで行く感じです。カメちゃんの見た目はカメなんだけど、言動がカメとはほど遠いというギャップで笑わせる作品。それ故にシュールな部分が多いですが、そこのツボが合えば非常に笑える作品でしょう。私はもちろん、笑いながら読んでいました。

 作者はこういった人間以外の生き物系ショートギャグがとにかく得意で、これ以外にも「猫ラーメン」「いぬ会社」「ザリガニ課長」等、よく言えば他者の追随を許さない、悪く言えば同じような作品ばかりではありますが、どれも変わらず面白いです。個人的には、このカメちゃんか猫ラーメンかの二択ですかね。ずっと読み続ける所存ではありますが、またいつか、サンデーに戻ってきてくれる日を待っています。

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