2010/01/07

フタガミ☆ダブル

Img557 矢吹健太朗 著。週刊少年ジャンプ2010年05、06合併号掲載読み切り。

 ごくごく普通だと自分では思っていたし、その日までは実際その通りだった中学生、双神想介は、ある日背格好から服装まで何もかも自分そっくりの人間を見てしまう。さらに自分がいないはずの場所にいたと姉やクラスメイトたちから続けざまに言われ、彼はそれが自分で見てしまったら死ぬと言われているもう一人の自分、ドッペルゲンガーではないかと考えはじめる。ところがそこに、想介が密かに憧れていたクラスメイト、雨音結花が現れ、それはドッペルゲンガーの正体である幻人(イド)という残留思念の集合体であり、早く捕まえないと面倒なことになってしまうと言うのだったが……。

 そんな出だしの、学園オカルトコメディー。上記あらすじ通り、「ドッペルゲンガー」と「イド(自我)」というネタを合わせ、それをふくらませてつくったという感じのお話です。ドッペルゲンガーを見た者は死ぬ、というのは現実にある都市伝説ですが、それに対するオリジナルの答えも作中で示してあり、単にドッペルゲンガーという設定を流用しただけでなく、ネタとしてきちんと組み入れてあるな、という印象をうけました。作品設定としては使い回しが効くし、キャラも問題なしとすぐにでも連載できそうな勢いではありますが、そもそも作者は「BLACK CAT」や「ToLOVEる」と言った人気作を手がけていたわけですし、これくらいやってくれないと困る、というのが本当のところかもしれませんけどね。

 そして今回調べていて、離婚騒動のことを初めてちゃんと知りました。ToLOVEる連載終了時に妻がどーこーとかネタになっていたのをちらっと見た覚えはありますが、まさかこんな展開だったとは。どこまでが本当なのかとかはわかりませんが、こうして高評価の読み切りの発表もできたことですし、これからもぜひがんばってほしいと思います。

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2009/12/27

復活の地

Img551 原作・小川一水、作画・みずきたつ。月刊コミックフラッパーにて2009年より連載中、単行本1巻まで以下続刊。

 王紀440年5月44日夕刻、レンカ帝国の首都トレンカを、未曾有の大地震が襲う。建物は崩れ橋は落ち、国会がまさに開催中であったグノモン宮議事堂も崩壊。引き起こされた火災は旧市街を中心にまたたくまに広がり、メイポール祭の日でもあったため人で溢れかえっていたメインストリートは、阿鼻叫喚の地獄絵図と化してしまう。鉄道、道路、通信は断絶し、政府省庁をはじめとした行政機関も壊滅。かろうじて陸軍や天軍が独自の救助活動を始める中、総督が亡くなってしまったために臨時のジャルーダ総督となった帝国高等文官、セイオ・ランカベリーは、公僕としての矜持に従い、民を救うために動き出す……。

 そんな出だしの、災害パニックSF。ハヤカワ文庫JAから出版されている同名小説のコミカライズ作品です。原作者の小説がコミカライズされるのはこれが2作目なんですが、1作目の「第六大陸」に比べると、こちらはまずマンガとしてしっかりしています。そして忠実度度合いですが、こちらも第六大陸に比べると原作に忠実であり、変に凝って失敗したりはしていないので、原作を知っている人にならばこちらの方が受け入れられやすいでしょう。ただし、この場合の忠実度が高いというのは、マンガならではの表現が少ないということでもあり、なら原作を読めばいいんじゃないの? という風にも思えてしまうんですけどね。このあたりはコミカライズ作品が持つ難しさの一つであり、どう原作と違いを出すかは作者の腕の見せ所なんでしょうが、今のところは大きく冒険することもないので、失敗もしていない、という感じでしょうか。

 ストーリーはトレンカを大地震が襲い、そこからの復旧をとある志し高き官僚の視点で描く、というものなわけで、綿密に計算され、かつストイックな原作の展開は、読んでいて非常にひきこまれるものです。このコミカライズ版も現時点ではそれほど違いはなく、良く言えば原作に忠実、悪く言えばマンガである必然性が薄いわけですが、一つだけ大きな違いがあります。それは、物語のヒロインであるスミル内親王が、未だまともに出てきていないこと……。あれれ? 小説に対してマンガの一番のメリットは、当然絵があることなわけですが、なのに見た目にも映えるヒロインを出さないってどういうこと? 確かに時系列的には出番はまだ先なんですが、小説ではプロローグという扱いにして、一番最初に出番を持ってきているというのに……。最初にヒロインを出さないメリットがあるとは思えないんだけどなー。

 原作を知っている身としては、今作は現時点ではとりあえず読める、という感じでしょうか。ただ話は今後、人間関係がどんどん複雑になり、政権争いとかも出てくるので、そのあたりをどうマンガで表現するのかなー、というのが期待でもあり不安でもあります。あとはアレですね、小説とマンガは密度が違いますから、コミカライズする際には削れるエピソードは遠慮無く削る必要があると思うのですが、今作においてはそういうった削っている部分がまだあまり無いんですよね。なので、正直このペースだと、完結までにけっこうな時間がかかってしまうんじゃないかと思います。個人的にはそれでもいいんですが、でもマンガには途中打ち切りがありますし、やっぱり難しいんだろうなー。

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2009/12/10

BREAK-AGE

Img524 馬頭ちーめい 著。月刊アスキーコミックにて1992年連載開始、同誌休刊に伴いコミックビームに移籍し、1999年完結。単行本全10巻。

 時は西暦2007年、ビス一本からカスタム可能なバーチャル・パペット(VP)と呼ばれるロボットを操って電脳空間で戦う体感型アーケードゲーム、デンジャー・プラネットⅢ(DP)に熱中していた国府高専1年の仁村桐生は、バトルロイヤルで弁慶という重装VPに完敗する。あれだけの装備でなぜオーバーフローしないのか、そこに興味を持った桐生は、弁慶のパイロットに会うため隣町のアミューズメントスポットへと出向くが、なんと目的の相手は一つ年上の高原彩理という女子高生だった。翌日桐生は、自分が勝ったら付き合って欲しいという条件の下、完成したばかりのハンドメイドVP「九郎」で弁慶に勝負を挑むが……。

 そんな出だしの、電脳空間ロボットバトル。デンジャー・プラネットとは、ようはゲームセンターにおける通信、協力、対戦可能なロボットアクションゲームのことであり、古くはバトルテック、最近なら機動戦士ガンダム 戦場の絆、を思い浮かべてもらえば近いんじゃないかと思います。そしてそれらのゲームで自機として使用するロボットを、自宅で自由に作成、カスタマイズできる、という感じですね。作中の舞台は2007年から始まりますが、これは1990年台から見た2007年ということであり、すでに成されている事柄もあれば、未だ実現していないこともあります。通信網がISDNだったり、インターネットではなくパソコン通信のままだったりするのはご愛敬。逆にロボットを自宅で自由にカスタマイズ等は未だにできませんが、正直これはチート対策が難しいのかなー、という気がしますね。あとは技術的には可能でも市場の成熟速度が追いついておらずコスト的に無理とか、そんなところでしょうか。ただしその当時、このDPというゲームを成立させるためのシステムはきっと近い未来には実現可能なことなんだろう、と思えるだけのリアリティはあり、まずその設定だけでも文句なしに夢のある、素敵な作品でした。

 ストーリーとしても、最初は単なるユーザーだった桐生たちが、ある事件をきっかけに徐々に開発側の人間となっていき……、という感じで、これってある意味、ゲーマーの夢の一つと言えると思うんですよね。そしてそこに正体不明の敵が現れ、技術者として、そして一プレイヤーとして戦いを挑んでいく、という感じで、正直燃えます。シリアスパートとコメディパートのメリハリも効いていて、時に笑いながら、時に手に汗握りながらと、最初から最後まで本当に面白い作品でした。ただそれだけに、ラストの陰謀の首謀者(の部下)であるイーナック・アルターの正体だけは「えーw」という感じでしたが、破綻させずに風呂敷を畳むためには、そのくらいは仕方なかったのかもしれませんね。

 作者はその後、同誌にてBREAK-AGE外伝となる「ボトルシップ・トルーパーズ」の連載を始めますが、じきに中断、その後商業誌での出番無しと、ちょっとしょんぼりな状態です。(ボトルシップトルーパーズ自体は、2006年に書き下ろし多数の単行本で完結) ただ漫画家をやめてしまったわけではないらしく、ゲームショップ「わんぱくこぞう」で配られている小冊子(読んだことが無いので詳細は不明)での連載は今でも行っているらしいので、またいつか商業誌に戻ってきてくれる日を、首を長くして待ち続けたいと思います。

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2009/12/02

冬物語

Img516 原秀則 著。ヤングサンデーにて1987年~90年にかけて連載、単行本全7巻完結。

 落ちるはずがないと思っていた八千代商科大にまで落ち、それが元で彼女にもふられてしまった浪人生、森川光。仕方なく予備校の申込みへ向かった彼は、そこでとある同じ予備校生の女の子に一目惚れしてしまう。無意識のうちに同じコースに申込み、コースごとの説明会で隣の席を確保し、顔見知りになることに成功した光だったが、駅までの帰り道で彼はとんでもない事実にようやく気付く。それは、その女の子、雨宮しおりが目指しているのは東大であり、選んだコースも東大専科だということ。そして、八千代商科大ですら落ちた光にとっては、東大専科コースはついていくことすら不可能であるということであった……。

 そんな出だしの、浪人生たちの恋愛ストーリー。はっきり言って受験生は読んじゃいけないレベルの鬱マンガ。ただ、受験生が読むべきではないのは確かですが、この作品が鬱マンガである本質的な理由は、主人公が浪人生である境遇ではなく、性格にあるんじゃないかと思います。主人公の光は流されやすく優柔不断で、大学に落ちて彼女にもふられてうじうじしていると思えば、予備校で出会った別の女の子に一目惚れして確認もせずに東大専科コースを受講し、挙げ句の果てには悲劇の主人公ぶるという、リアルで知り合いだったらあまり近づきたくないタイプ。なんというか、全部自業自得じゃん、という感じなんですよね。主人公はもう少し応援できるタイプにしてほしいなー、と切に思いました。

 ただしこの作品、そういった受験の痛い部分がどうしても目立ってしまいますが、本質的には複数の男女の恋愛ストーリーであり、受験はあくまでストーリーを盛り上げるためのエッセンスでしかありません。そしてそれを念頭に入れて冷静になって読むと、青春群像劇としては問題なく面白いんですよね。じゃあなんでこんな鬱マンガになってしまったかと言うと、それは当然浪人生を扱っているからに他ならないわけで、こういったナイーブな問題をテーマに扱うのはやっぱり難しいのかなー、と思わざるをえませんでした。

 作者は現在、小学館の携帯マンガサイト「モバMAN」にて、「駅恋」という恋愛オムニバスストーリーを連載中とのこと。ヤングサンデーを購読しなくなってから自然と読む機会が減ってしまったのですが、こちらは単行本も出ているようですし、久しぶりに読んでみようかなー、と思っています。

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2009/11/25

FADE OUT

Img510 いけだたかし 著。月刊サンデーGXにて2000年~04年にかけて断続掲載、単行本1巻まで未完。画像はメディアファクトリー版単行本全2巻完結。

 14歳の誕生日を迎えたその日、中学2年生の阿賀野こかげの身には、知らない声が聞こえたり、突然足が透けだしたりといった、不思議なことが起こり始める。父が言うには、実は阿賀野家は唯一残った幽霊族の末裔であり、長女が14歳になると、幽霊族としての力に目覚めるのだという。力に目覚めたことで見えるようになった祖母の話によれば、元々地球には霊界と物質界があり、幽霊族だけがその二つの世界を自由に行き来して栄えていたらしい。だがこかげにとっては、能力に目覚めたからと言って、ただ祖母の幽霊が見えるようになっただけの話にしか思えなかった。そんなある日、こかげはクラスメイトから、こかげの幼なじみであるトシアキを紹介して欲しいと頼まれる。話の流れで承諾せざるをえなかったこかげは、仕方なしにそのことをトシアキに伝えるが、こかげはその時まだ気付いていなかった。自分はトシアキの事なんか別にどうとも思ってないと意識するたび、能力に目覚めた身体は不安定となり、消えてしまいそうになることに……。

 そんな出だしの、ちょっとオカルトチックなハートフルストーリー。ストーリーはこの後、主に辺りを漂う残留思念等から人の想いを感じ取れるようになったこかげが、飛んだり霊と話をしたりといった能力を使って、人助けをしていく、という感じで続いていきます。コンセプトは悪くないと思うのですが、惜しむらくは展開がややちぐはぐだったこと。特に大きな不満点が2つあり、まず一つめは、突然吸血鬼が出てくること。この作品の大前提として、霊界と幽霊族というオリジナル設定があるわけですが、それらの設定では空想上の産物である吸血鬼が実在する、という説明には成り得ません。故に、キャラクターの統一性が感じられず、世界観を壊してしまっていると思います。もう一つは、幽霊族の先輩であるシイネや、人より強い力を持った存在という意味での吸血鬼が何度か口にする、「人間ごとき」というセリフに対する答えが最後まで無いということ。ラストまで引っ張れるテーマであっただけに、てっきり最後にその答えがあると思っていたんですが、無くてがっかりでした。一応最終回で、薄ぼんやりと言及しているようにも見えますが、もっとはっきり締めることができたであろうだけに残念です。ただ2つめに関しては、もしかしたら打ち切りということで、そこまでできなかった、ということなのかもしれませんけどね。

 そして最後に一点だけ。最終回のストーリーがガールミーツガール物なわけなんですが、この精神が時を経て「ささめきこと」に繋がっている、ということであれば、正直それだけでこの作品の価値が……なんて言うのはまったくフォローになっていませんねごめんなさい。そしてもう一点(しつこい)そのそのささめきことなわけですが、どうか話が無駄に引き延ばされたりしませんように……。アニメ化のせいで連載延長とかフツーにありそうで、ホント心配です。単行本表紙を春夏秋冬、そして再び春、とかで5巻で綺麗に終わってくれてよかったんだけどなー。

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2009/10/26

ふたつのスピカ

Img480 柳沼行 著。コミックフラッパーにて2001年~09年にかけて連載、単行本全16巻完結。

 鴨川アスミがまだ1歳の赤ん坊だったとき、日本初の有人宇宙探査ロケット「獅子号」が打ち上げ直後に爆発し、市街地に墜落して多くの犠牲者を出すという事故が起こる。その事故に巻き込まれたアスミの母は意識不明のまま5年後に息を引き取り、獅子号の技術者だった父は事故処理後に宇宙開発事業団を辞め、土木作業などをしながら男手一つでアスミを育てていった。そして14年後……中学卒業を間近に控えたアスミは、ロケットの運転手になるという子供の頃からの夢を叶えるため、その足がかりといえる東京宇宙学校を受験しようとしていた。だが国立の専門学校とはいえ入学金は高く、さらにもし入学するのなら父を1人置いて寮に入らなければならないという事実に、アスミはその夢をあきらめようとするが……。

 そんな出だしの、東京宇宙学校という宇宙に関する事を色々学べる国立の専門学校を舞台とした、学園青春ドラマ。上記あらすじ後、アスミは結局東京宇宙学校に入学するわけですが、やっていることはオーソドックスな、高校生たちの「夢に向かって一緒に頑張ろう」系のお話です。ただしアクセントとして「獅子号という民間人にも多数の死者を出した痛ましい事故」と「マリカという同級生の身体に隠された秘密」というものがあり、登場人物のほとんどがこの二つに多かれ少なかれ絡んでいる、という繋がりがあります。これは言い方を変えると、登場人物のほとんどが何らかの形でもともと繋がっているというわけで、ちょっと偶然が多すぎるんじゃ? と思ってしまう部分もありました。終盤でマリカとシュウまでが繋がっていたことが解ったときは、正直ちょっと萎えましたねー。

 そのマリカの件ですが、これもちょっと疑問な部分がありました。症状の進行を抑えるための薬を飲んでるとのことですが、それって血液検査で出まくりなんじゃないでしょうか? そしてそんな検査結果では、とても入学することができないような……? 視力が悪くても問題にはなっていない、ってのもちょっとあれ? って思ってしまいました。うーむ。

 あともう一つ、この作品には獅子号のパイロットであった青年の幽霊(?)が出てくるのですが、何故かアスミだけが見たり話したりできるという、ちょっと謎な設定でした。立場的にはアスミの相談相手になったり彼女を導いたりという重要なものだったんですが、SF作品なのに幽霊とかをこんなメインキャラにしてしまう、というのがちょっと衝撃ではありましたね。単行本裏表紙のあらすじが「SFファンタジー」となっているのも、このあたりの所以なのかもしれません。

 そんな感じで気になる部分はあるにはありましたが、メインの青春ドラマ部分は問題なく面白く、卒業式のシーンはお約束とはいえうるっときましたね。素朴な絵柄というのも、作品の雰囲気に非常に合っていたと思います。そしてそうなると気になるのは、やはり次回作。個人的には今作はやや設定をクロスオーバーさせすぎ、という感がありましたので、次はもうちょっと簡潔な設定の方がいいんじゃないのかなー、なんて思っています。初連載作品だと思われる今作が8年という長期連載となり、アニメ化、ドラマ化までされてしまった以上プレッシャーは大きいとは思いますが、がんばってください。

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2009/10/21

ブラックジャックによろしく

03 佐藤秀峰 著。モーニングにて2002年より06年まで連載、単行本全13巻完結。現在はその完全な続きである「新ブラックジャックによろしく」が、ビッグコミックスピリッツにて連載中、単行本6巻まで以下続刊。

 この春、永禄大学医学部を卒業し、そのまま永禄大学付属病院の研修医となった斉藤英二郎の現在の待遇は、1日平均労働時間16時間という激務にして、月収はわずか3万8千円という超薄給。日本の医療は自分たちが支えているという自負はあったが、その給料では家賃も払えないため、実家がけして裕福ではない斉藤は、病院の当直のバイトなどをして生計をたてていた。だが3ヶ月の基礎研修を終え、第一外科の研修に入った斉藤は、その頃から徐々に自分の熱意と医療現場の現実との差、極論すれば、大学病院の医療は患者のためではなく、医者のためだという現実を、認識し始めていた……。

 そんな出だしの、医療現場を舞台としたヒューマンドラマ。研修医である主人公の斉藤は、第一外科、第一内科、小児科、第4外科、etc……と研修先を転々とするのですが、行く先々で揉め事を起こし、それを不器用ながらも、一つずつ乗り越えてく、という感じでストーリーは進んでいきます。そしてその揉め事の内容ですが、一般人が知りえなかった日本の医療の現実、医療は患者の都合ではなく医者の都合によって行われる、というものに対し、同じ医者である斉藤が反意を抱く、というものであり、私のような医療関係者ではない人間が読む分には、非常に興味深く読める内容でした。この内容を1から10まで全て信じてしまっていいのか、という疑問は残りますが、これはフィクションであるマンガ作品である、と最初から意識していれば問題はないでしょう。

 作中のどのシリーズも、そのシリーズ最終話は一応ハッピーエンドという形で終わってはいるのですが、個人的にはその道中があまりにネガティブな展開が多いのが不満点。現実なんてそんなものだ、最後がハッピーエンドなだけましだ、というのはわかりますが、なんというか、辛いのは現実だけでいいじゃない? という感じです。斉藤先生の悩みは確かに共感できるものなんですが、現実以外でもそんなに悩みたくないよ、というのは、私の心の弱さの問題でしょうか……。

 この作品は、当初は講談社のモーニングで連載されていたものが、小学館のビッグコミックスピリッツに移った、という点でも話題になった作品でもあります。その手のトラブルにしてはめずらしく内情もだいぶ語られているので、なるほど、そういうこともあるのかー、と思えてよかったのですが、こうなると期待するのは、マンガ家を主人公としたブラックジャックによろしくを描いてくれるのかどうか、ですよね(笑) ネタは医療関係よりは少ないでしょうが、雷句誠等の出版社を移った他の漫画家にも取材して、ぜひそのうち形にしてほしいと思っています(笑)

 なおタイトルである「ブラックジャックによろしく」についてですが、手塚治虫「ブラック・ジャック」は医療を手段としたヒューマンドラマであることに対し、今作は医療現場の現実と戦う研修医、というスタイルなので、同じ医者である、という事以外はあまり関連性が無いと思います。あえて深読みするなら、ブラック・ジャックのように、病院や医局といったしがらみから抜け出して患者とその病気に向き合いたい、という想いからきてるタイトルなのかもしれませんね。

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2009/08/21

ふたばの教室

Img417 八神健 著。ヤングアニマルにて2006年に連載、単行本全2巻完結。

 小学生のような外見の、都立みのり小学校の新任教師、皆実双葉の目標は、自分なりのやりかたで、生徒たちに学ぶことや考えることの楽しさを教えてあげるということ。ところが、さっそく5年3組の担任を受け持つことになった双葉でしたが、その意気込みとは裏腹に、生徒たちとはどうも温度差を感じてしまいます。元気に挨拶をしたところで、生徒たちはぎこちない返事をしてくれる程度だし、チャイムが鳴って注意をしても、教室は騒がしいまま。自分の世代と比べるとはるかにドライな今の生徒たちとは、学園ドラマで見たようなぶつかりあいすら起こりません。たった一週間で自信を失いかけていた双葉でしたが、そんなとき、現みのり小学校の校長であり、双葉が小学5年生だったときの担任でもある大芝に呼び出され、生徒たちの顔は見えておるかね? と助言を受けます。その言葉であることに気付かされた双葉は、まずは1時間生徒たちを好きに騒がせ、それを観察して一人ひとりの特徴を見付け、そこから取っかかりを掴もうとしますが……。

 そんな出だしの、学園ドラマ。上記あらすじが学級崩壊編、解決後に今度はPTA対立編と、学校におけるネガティブな問題を前面にもってくるという覚悟完了っぷりは、こんなにうまくいくわけないというツッコミも入るでしょうが、学園物としては王道ですし、それなりに読ませるものでした。ところが2巻になると、今度は一転して恋愛や下着をテーマとした話が続くという、まるでやぶうち優「ないしょのつぼみ」のような展開。それはそれで面白かったのですが、正直1巻と2巻の印象はだいぶ違うため、どちらかに集中してやっていた方が良かったんじゃないかなー、と思わずにはいられませんでした。個人的には1巻の内容はもっとライトに扱い、当初からポップな内容の方が良かったんじゃないかと思っています。

 作者の代表作といえば……うーん、週刊少年ジャンプで連載していた「密リターンズ」、もしくは週刊少年チャンピオンで連載していた「ななか6/17」になるのでしょうが、チャンピオンREDで連載していた「どきどき魔女神判」シリーズのはっちゃっけっぷりも実は捨てがたかったりします。ただなんだかんだ言って、私が一番好きなのは、このふたばの教室かもしれません。多分、設定やキャラが好きなんでしょうね。上でも書いた通り、これが最初からポップな内容だったら、もっともっと面白かったと思うのになー。

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2009/07/06

ふら・ふろ

Img371 カネコマサル 著。まんがタイムきららキャラットにて2007年より連載中、単行本2巻まで以下続刊。

 天然で楽天家のハナと、現実的だけど可愛いところもあるナツは、とある狭くてぼろくて夏暑くて冬寒くて駅もスーパーも遠くて洗濯機が置けなくて大家さんが乱入してくるアパートの管理人を、2人でしています。贅沢なんてまったくできないくらい生活は貧窮していますが、必要以上に明るく元気な性格で、今月もなんとか乗り切ります。今日も2人は、貧乏なりに季節のうつろいを感じたりしながら、日々を楽しく過ごしているのです。

 そんな感じの、日常系1ページコメディ。管理人という設定は2人とも学校にも仕事にも行かないという理由付けに使われているくらいで、必然性はあんまりありません。そもそも作中で見る限りアパートは4部屋しか無くて、うち1部屋にはハナとナツが住んでいて、2部屋は(連載開始時は)空き部屋という状態ですし。ただ、その設定が意味をなしていないとしても、作品としてはちょっとシュールでコミカルな2人のかけあいは楽しく、季節のうつろいを感じたりと意外に趣があるのがまたいい感じです。ふら・ふろとはflat flowの略で、直訳すると平坦な流れ、になるわけですが、まさにそれを目指した作品と言えるでしょう。この2人、まだ若いのに(見た目高校生くらい)将来的にはどうするんだろう……? とか思ってしまったら負けということですね。

 作者はこれ以外には連載を持ったことはないようです。1ページマンガではありますがちゃんと動きのある画は描けていますし、次はストーリーマンガを読んでみたいなー、と思います。ただそうなると、この作品と同時連載は難しいかもしれないので、まずはこの作品をきちんと終わらせるのが先決ですかねー。

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2009/07/05

フープメン

Img372 川口幸範 著。週刊少年ジャンプにて2009年連載、完結済。単行本1巻まで以下続刊。

 都立八柴高校一年生の佐藤雄歩は、ある日ものすごい可愛いと噂の同じ一年生、小金井真央の呼び出しを受ける。放課後、淡い期待を抱きつつ小金井の元へと向かった雄歩だったが、話の内容は愛の告白ではなく、なぜか 「バスケ部に入らない?」 というものであった。あっけにとられつつも、見学だけでもと体育館まで連れて行かれる雄歩。だがなんとそこで、雄歩はバスケ部キャプテンから、救世主が来たと熱烈な歓迎を受けてしまう。もしかしたら自分にはバスケの才能があって、それを見抜かれたのかも? いきなり連れてこられてそんな歓迎をされてしまっては、雄歩がそんなあり得ない妄想をしてしまうのも仕方ないだろう。だが現実には、救世主とはアメリカからの帰国子女、ジュシュア・久慈・グリフィンJr.の事であり、雄歩は英語が話せるということで、通訳として呼ばれたのであった。落胆しつつも、言葉が通じて嬉しいとジョシュに涙ながらに言われ、かつ英語が話せてすごいと小金井に褒められたことで、雄歩はバスケ部に入ることを決意するが……。

 そんな感じの、素人が主人公のバスケマンガ。スポーツ物っていうのは極論を言うと基本は全てがありがちな作品なわけで、どう個性を出すかが連載前のアイデア勝負な部分なんでしょうが、この作品は主人公が最初は通訳として誘われる、という事で個性としようとした作品です。一見バスケを題材にする必然性が無いように思えますが、連携が重要なスポーツ、というのが必要条件なため、十分必然性はあると言えます。「連携が重要」が必要条件になる理由ですが、それは第1話できっちりと表現されています。雄歩が入部することになり、早速2、3年チーム対1年生チーム(ジョシュ、雄歩込み)でミニゲームをするのですが、当初は連携が悪くて押されていた1年生チームが、ジョシュのアドバイスを雄歩が訳して伝えることで見違えて動きがよくなり、勝ってしまう、という流れなんですよね。これにより、雄歩はバスケのまったくの素人でありながら、自分の力でゲームが左右される、ということを体験してしまうわけです。素人が主人公のスポーツマンガの第1話としては、十分いけている展開でしょう。とういわけで、雄歩にそれを体験させるために、連携が必要なスポーツを扱う必要があったということです。

 この第1話はとても良かったですし、その後の雄歩の成長物語もまぁまぁ、なにより表現のセンスが独自で、正直私の中ではかなりのプッシュ作品でした。しかしながら、結果は17話での打ち切り。ホント、しょんぼりでした。原因として一番はやはり、ちょっと前に始まった藤巻忠俊「黒子のバスケ」の存在でしょう。バスケマンガの少ないジャンプにおいて、2本のバスケマンガを両方連載続行というのはやっぱり無理ですよね……。黒子に勝つしかフープメンが生き残る可能性は無いとは思いましたが、黒子はセンターカラーとかももらってましたし、それも無理。私個人はけして敗けていなかったと思っていましたが、仕方ない結果と言えるでしょう。あとは、フープメンが抜群に面白ければ、黒子と2本とも連載続行の可能性もあったんでしょうが、そこまで言えるほどでは無かったでしょうからねー。黒子が無ければきっと打ち切られなかった、と思うのは、私のひいき目がすぎるのでしょうか。無念です。

 作者は読み切りデビューはすでにしているものの、連載はこれが初めてとのこと。この打ち切りを過去の失敗とは考えず、次につなげてほしいです。期待しています。

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