2009/08/28

八咫烏

Img424 小林裕和 著。週刊少年サンデー2009年39号掲載読み切り。

 戦国期、卓越した火縄銃の用法を用いて必勝の傭兵として各地を転戦する、雑賀衆と呼ばれる集団が存在した。文禄7年(1564年)、播磨の国で行われた山城での籠城戦に参加していた雑賀衆の一人、雑賀孫一は、その日も期待に違わぬ働きを見せていたが、敵方に援軍が到着して味方の後詰めは来ず、その戦力差は3倍という現実に、城主は撤退を決意。孫一を含めた雑賀衆にも同行を命令するが、孫一はそれを拒否し、きっちり片を付けるためになんと雑賀衆20人だけで城に残ると言うのだった……。

 そんな感じの、戦国絵巻マンガ。いわゆる鉄砲集団雑賀衆をそのままベースとしており、タイトルの八咫烏(ヤタガラス)も、実際に戦国時代に雑賀衆の鈴木家が旗に使っていたそうです。画やコマ割りも問題無いし、一読する分にはフツーに読める作品なのですが、きっちり考察しようとすると色々問題点というか粗が見えてくる、私としてはちょっと惜しい作品でした。

 具体的に言うと、メインストーリーは雑賀孫一率いる雑賀衆の活躍とこの戦いの顛末なわけですが、そこに若き日の黒田孝高が出てきて、一兵卒としては無能だったが、この戦いを経て名軍師としての道に目覚める、というサブストーリーが組み込まれてるんですよね。それ自体は問題ないんですが、それを証明するための手段がちょっとお粗末。約6倍? の敵に対し、黒田孝高の将棋を元に雑賀孫一が考案した奇襲作戦で勝利を収めるのですが、兵力が均衡していた当初は敵は2方向から山城を攻めていたのに、援軍が来たら今度は何故か全軍をもって正門のみから攻め入ろうとしているという、お前それ一番前の部隊しか戦ってないだろう状態。もしここで、黒田孝高の考案した策で敵を正門に集中させることに成功した、という記述が1ページでもあれば、全然説得力が増したであろうだけに残念です。そしてそれは、主人公は雑賀孫一なのだから、サブキャラである黒田孝高をどこまで出張らせるか、という根本的な問題に繋がっちゃうんだと思うんですよね。おそらくここで黒田孝高を出張らせてしまうと、主役のはずの雑賀孫一がかなり食われてしまう、と思ったのではないでしょうか。

 雑賀孫一を主役としてマンガを描こうとした。サブキャラに若き日の黒田孝高を持ってきたら、良い感じになったけど、主役が食われそうになってしまった。仕方ないので、黒田孝高の出番を減らした。もし本当にこういう流れだったとしたら、非常に残念なことです。解決策としては、雑賀衆はあくまで傭兵集団、影の存在であるとし、雑賀孫一をメイン主人公にすることはすっぱりあきらめ、黒田孝高を主人公にしとけば良かったんじゃないかなー、と思います。雑賀孫一は影の主人公という感じで。なんというか、いつにも増して言いたい放題ですねごめんなさい。

 作者は現在、クラブサンデーにて行われている新人王決定戦にノミネート中であり、Bブロック予選を読者投票1位で勝ち抜いた作品「D.O.U.M」が現在もサイトで読めるようになっています。こちらはうってかわって近未来バトルアクション作品で、やはり一読する分には問題なく読める作品なのですが、できるならもう一山欲しかったなー、という物足りなさもある作品でした。ネタをもう少し詰めて、うまく消化できるようになれば、一気に面白くなると思いますので、期待しています。

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2009/07/22

やおよろっ!

Img386 なつみん 著。週刊少年サンデーにて2009年連載開始、現在はクラブサンデーにて連載中。単行本1巻まで以下続刊。

 CDプレイヤーにも、レトルトカレーにも、手錠にも、電話にも、扇風機にも、もちろん冷やし中華にも、森羅万象すべての物には萌えが宿っているのです。そう、八百万の萌えが! 神国日本を体現する擬人化ギャグ、ここに降臨……!

 簡単に言えば擬人化オムニバスギャグということになるのでしょうか。ようはなんでもかんでも擬人化してみました、というだけのものなんですが、神道における八百万の神と組み合わせることで、一応なんでもかんでも擬人化に意味を持たせてみました、という感じです。ネタにマジレスすると、多神教である神道を支持する日本だからこそ、すべての物事を擬人化するという文化が生まれたと言えるわけですよ。神国日本万歳!

 ネタ自体は面白い物もあればつまらないものもあるという、正直フツーのレベルなのですが、雑誌掲載時に柱に書かれていた冷やし中華ちゃんと犬の掛け合いがすごい楽しかったんですよね。そして普通柱は単行本には収録されないわけで、この作品ではどうなるかと危惧していたんですが、編集側もそれはわかっていたようで、無事掲載されていてほっと一息です。本誌よりクラブサンデー(Web連載)へと移行してしまいましたが、8000000人目までがんばってください。

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2009/03/22

やさしくしないで!

Img251 松山花子 著。月刊まんがくらぶにて2004年~08年にかけて連載、全4巻完結。

 会社員、伊原優一の生き甲斐は、他人に優しくすること。困っている人がいれば手を差し伸べるし、失敗した人がいればすぐさまフォロー、落ち込んでいる人がいれば言葉を尽くしてなぐさめます。また質問されれば裏表無く親切丁寧に答えますし、薦められれば喜んで承諾、どうしても断る際には相手の気持ちを考えて、なるべく角が立たない言い方にするのです。だけど悲しいかな、優一の優しさはけして裏があるわけではないのですが、常に結果は裏目裏目に出てしまうのです……。

 そんな感じのギャグ4コマ。困っている人に優しくするけど、結果的には大きなお世話だったり、失敗した人にフォローの言葉をかけるけど、結果的には追い打ちをかけていたりと、優一の裏目っぷりと空回りっぷりはもう最高に笑わせていただきました。ようは空気が読めていないのですが、空気が読めていない上で優しいというのは、こんなにも凶器になるんですね。終わってしまったのが本当に残念です。

 作者は非常に生産量が多いタイプで、現在も複数の作品を連載中。単行本ももう余裕で30冊以上出ているらしいので、気長に集めていこうと思っています。

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