岡崎二郎

2009/05/04

大平面の小さな罪

Img307 岡崎二郎 著。ビッグコミック増刊号にて1996年~98年にかけて不定期掲載、単行本全1巻完結。

 広告代理店に勤めるADの宇田川は、ある日自分の作った広告図案から一人の女性が出てくるという事態に遭遇する。平面管理委員会行動局員00818、通称セーナと名乗る彼女の話によれば、全世界の平面はすべて彼女の所属する組織の管理下にあり、彼女たちの力によって、平面は見た目を変えたり力を持ったりするのだという。その証拠に、セーナは紙に書いた「あ」という文字を「阿」と見えるように、宇田川の目の前で調整してみせる。それは、広告代理店に勤める宇田川にとって、大きなビジネスのチャンスであった。人間界でリッチで楽しい生活がしたいというセーナと手を組み、宇田川はさっそく独立すると、まずはビル全面を広告にするという仕事を手がける。それは素晴らしい反響を呼び、宇田川は次々と仕事を受注。仕事はどんどんと増えていき、それに伴い収入も加速度的に増加。宇田川は充実した毎日と大金を手に入れ、セーナは高級な服を着て毎日パーティーをやるといった、享楽的な生活を手に入れる。こんなに派手にやると委員会にばれるのではないかという危惧もあったが、紙幣や有価証券等を直接操作するということさえしなければ大丈夫というセーナの言葉通り、すべては順調に進んでいった。実際、その部分では、最後まで委員会にばれることはなかった。だが、平面ならば完璧に操作できるセーナではあったが、人の心まで操作することはできるはずもなく、やがて二人は少しずつすれ違っていく……。

 世の全ての平面を管理する、平面管理委員会、という架空の設定を用意した上でのミステリ風味作品。上のあらすじは第1話のものですが、このあとも新たな平面が操作される事件が発生し、宇田川とセーナがその原因究明に動く、といった流れになります。話自体も岡崎二郎節炸裂という感じで非常に面白いのですが、特筆すべきは、平面を自由に操作できるというその能力。これってあれですよね、もし現在この能力を使えるなら、痛車や痛バイク、痛キーボード等がもうそれこそ自由自在に(だまれ

 セーナの浅慮だけど誠実な性格も、今で言えばフツーにツンデレになるでしょうし、ある意味時代を先取りしすぎた作品と言えるのかもしれません。いや、先取りしたおかげで、痛車とかの変なネタを使わなくて済んだと言えるんでしょうが……。

 これは問題点というわけでは無いのですが、あえて一つだけ言うとすれば、作者の作品はすべてSF短編集の「アフター0」に組み込まれてしまって問題が無いんですよね。この作品も、「アフター0 平面管理委員会編」とかなっていても、全然違和感が無かったりします。まったく問題は無いのですが、これは短編集が代表作であるという作者ならではの事例なんでしょうね。

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2009/01/15

アフター0

Img167 岡崎二郎 著。ビッグコミックオリジナルにて、1988年~1996年にかけて連載、全6巻完結。現在は画像の新装版(著者再編集版)全10巻が発売中。

 プラネタリウムで知り合った男性は、人類と文明をバランスよく育てる仕事をしていると言っていたが……。7000年周期の彗星が地球に近づきつつあるある日、ゲルフラウと呼ばれる無害だが不気味な物質が、空中を漂うようになった……。世界最高のシェフがついに出会った自身の料理の真の理解者は、地球から2万6千光年の彼方にある星からやってきた、その星最高のシェフだった……。月面基地に来た最初のテレパス能力者に届いた、正体不明の声とは……。過去現代未来の地球で起こる、無さそうで有りそうなSF短編集。

 SFと言っても範囲は広く、サイエンスフィクションではなく藤子F不二雄の「すこしふしぎ」のほうがぴったりくると思います。主人公の固定されない短編集で全10巻というボリュームは、すごいの一言に尽きますね。通常版全6巻も持っていたのですが、新装版は単行本未収録作品が大量に収録されるということで、有無を言わさず買ってしまいました。大いなる眠り子シリーズ等いくつか例外はありますが基本的には1話完結方式で、また藤子F不二雄のSF短編集とは違ってブラックな話はほとんど無く、基本ハッピーエンドで終わるというのもポイントです。私が一番好きなのは、新装版6巻に収録されている「ショートショートに花束を」 ショートショート小説を至高の娯楽にするための、状況と場所と人、そしてあのストーリー。もう最高です。

 作者の作品は他にもたくさんありますが、現在はアフター0 NEOを同じくビッグコミックオリジナルにて連載中。いつまでも書き続けて欲しいものです。

 そして蛇足ではありますが、岡崎二郎という名前から個人的に思い出すのは、アフター0と同時期に学研のコミックNORAで「とわいらいと通信」というマンガを連載していた、田川滋という方です。とわいらいと通信はアフター0と同じくSF短編集で、私個人は両作は同レベルで面白いと思っていました。だが所属出版社がいけなかったのか、それとも生産量の違いが響いたのか、そもそも実力の差があったのか、今やその差は驚くべき程に……。同じように面白いと思った作品の片方は続き、片方は消える。岡崎二郎の名を見るたび、この無情を思い出します。あの当時の世の中には、同じような力を持った漫画家2人を両方受け入れるキャパシティは、無かったということなのかなー(言い過ぎ

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