手塚治虫

2009/06/12

ブラック・ジャック

Img346 手塚治虫 著。週刊少年チャンピオンにて1973年~83年にかけて連載、単行本全25巻完結。

 神業とも悪魔的とも呼ばれる外科医術の腕を持つ男、ブラック・ジャック。医師免許も博士号も持たぬが故に表舞台に立つことは無いが、それ故に法や制度に縛られること無く、自らの信念に沿って彼はその腕をふるう。今日も彼はどこかでメスを持ち、奇跡を生んでいるはずである……。

 無免許の天才外科医を主人公とした、ヒューマンドラマ。医療ドラマでもありますが、どちらかと言えば手術シーン等は手段であり、ドラマを形作る一つのパーツである、と捉えた方が正しいでしょう。ただし私のような素人が読む分には、手術シーンも十分迫力があり興味深いです。そして肝心のヒューマンドラマ部分ですが、まさに法に縛られない信念に則ったブラック・ジャックの行動は、読んでいて爽快感があります。もちろん万事がうまくいくわけもなく、時に後味の悪い終わり方になることもありますが、それすらもこの作品の魅力です。というか、私が手塚治虫の作品で一番好きなのがこのブラック・ジャックなので、なんでも褒めますよ?

 ただそんな中、唯一残念だったと言えるのが、作中のとあるシリーズが完結しなかったことでしょうか。ブラック・ジャックがまだ子供だった頃、ずさんな現場処理のせいで残っていた不発弾が爆発し、それに巻き込まれたブラック・ジャックと彼の母親は大けがを負い、その後母は亡くなります。そうなった原因である、不発弾の現場責任者5人を探し出し復讐をするというのがブラック・ジャックの目的の一つだったわけですが、2人目までは探し当てたものの、3人目以降のエピソードが描かれなかったんですよね。夢の中で過去を振り返る「人生という名のSL」が最終回扱いであるというのに不満はありませんが、できればこの復讐編もラストまで読みたかったです。

 現在ではこのような医者を主人公とした作品も多くなりましたが、それらとこの作品の一番大きな違いは、ほぼすべてが一話完結である、ということでしょう。作品構成上それはメリットもデメリットもあるわけですが、一話完結方式の作品を長期連載するにはものすごいひきだしの量が必要なわけで、その点からも手塚治虫の非凡さが伺えると思います。さすが、マンガの神様と言われるだけのことはありますね。

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2009/05/20

鉄腕アトム

Img322 手塚治虫 著。少年(雑誌名)にて1952年~68年にかけて連載、単行本は、写真のサンコミックス版は全21巻+別冊1巻にて完結。現在は文庫版等様々な形態で発売中。

 二足歩行ロボットがごく普通に存在し、人間と同じように学校へ行ったり仕事をしたりするようになった架空の現在。科学省長官の天馬博士は、愛する息子、飛雄を交通事故で失った悲しみから、飛雄そっくりのロボットをつくることを決意する。だが完成した飛雄は、仕草や行動は天馬博士を満足させる出来であったが、身体が成長しないというロボットとしては当たり前の、だが天馬博士にとっては致命的な欠点を持っていた。結果、飛雄はサーカスに売られてしまい、アトムという名で芸をしていたところを、偶然サーカスを見に来ていたお茶の水博士によって保護されることとなる。こうして保護者を得、教育を受けたアトムは、持ち前の正義感と10万馬力のパワーで、悪の組織やその手先のロボットから人間を守るため、戦うのであった。

 説明するなんておこがましいレベルのロボットマンガ。設定的には近未来ですが、アトムがつくられたのは作中では2003年なので、現在だったりします。ストーリーはシリーズ形式で、アトムが悪の組織やそこのロボットと戦うとか、ロボットがからんだ犯罪に巻き込まれて犯人を捕まえるとか、そういうパターンが多いです。基本的には勧善懲悪ですが、これは作者の性格からかあまり悪人っぽくない悪人が出てくることも多く、人間と照らし合わせてなかなか考えさせられる話も多いです。現在この作品を読むと、将来がアトムのような世界になるとはちょっと思えない部分も多いですが、それでもロボットマンガとしての基本の部分は今でも十分に鑑賞に耐えうるというか、問題なく面白いです。こんな作品が半世紀も昔に発表されているなんて、手塚治虫は話作りからしてもやはり天才だったんだなー、と思ってしまいます。

 アトムは掲載誌「少年」の休刊で中断されてしまった作品らしく、一応「アトムの最後」という最終回っぽい話はあるのですが、作者自身はまだまだ終わらないつもりだったと単行本にも書いてあります。今となってはもうありえませんが、仮に作品が描き続けられていたらどうなっていたのかなー、と思わずにはいられませんね。というかこうしてみると、きちんと完結してる作品って意外に少ないですよね……。

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2009/03/31

リボンの騎士

Img270 手塚治虫 著。少女クラブ1953年1月号~56年1月号にかけて連載、単行本全3巻完結。現在は画像の文庫版全1巻が発売中。

 天使チンクのいたずらで、女の子の心と身体を持ちながら、男の子の心も併せ持って生まれてしまった王女、サファイア。天使長にしかられたチンクは、サファイアの中から男の子の心を取ってこいと言われ地上に遣わされるが、なんと城では王女ではなく王子が生まれたと噂になっていた。それは最初は誤解だったのだが、男の子でないと王位を継げないという掟があったこともあり、王は結局誤解を解くことなく、サファイアを王子として育てることにしていたのだった。――そして12年後、サファイアは朝8時から9時までの間だけを城の奥庭で王女として過ごし、それ以外の時間は王子として過ごすという日々を送っていた。そしてサファイアが男なのか女なのかもわからず、城に忍び込むこともできなかったチンクは、未だ地上にとどまり、サファイアと出会う機会を覗っていた。

 そんな出だしの、少なくとも名前は超有名な冒険ファンタジー。タイトルのリボンの騎士とは、サファイアが身分を隠して変装して戦う際の名前です。半世紀以上前の作品なわけですが、設定や展開、コマ割りなどはさすがに古くささを感じるものの、ストーリーの軸となる部分はわりとひねられていて、今でも十分面白く読めると思います。強いて注文をつけるなら、サファイア視点のストーリーとチンク視点のストーリーが、前半はあまり噛み合ってないと思うんですよね。そこがもっと噛み合ってくれれば良かったのになー、という感じです。

 この作品には、作者自身の手によるリメイク(なかよしにて連載)があるんですが、こちらは未読なので、そのうち読んでみたいと思っています。それと、現在なかよしにて連載中の「サファイア リボンの騎士」ですが、主人公はサファイアの子孫であり、リボンの騎士の続編という扱いらしいです。作者自身の手による、サファイアの子供が主人公の続編「双子の騎士」もありますし、これだけ派生作品が生まれるのも、リボンの騎士が素晴らしい作品であるという証拠の一つと言えるんじゃないでしょうか。

 手塚治虫といえばマンガの神様なわけですが、一番好きな作品を一つだけ選べと言われたら、悩んだあげくに「ブラックジャック」を挙げると思います。ブラックジャックと火の鳥は、完結してほしかったなー。

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