日本橋ヨヲコ

2009/06/10

G戦場ヘヴンズドア

Img340 日本橋ヨヲコ 著。月刊IKKIにて2000年~03年にかけて連載、単行本全3巻完結。

 小説家志望の高校生、堺田町蔵は、人気漫画家である父、坂井大蔵がマンガを優先して母が出て行くのを止めなかったことから、父親のみならずマンガそのものまでを憎むようになっていた。そんなある日、町蔵の小説を読んだ漫画家志望の同級生、長谷川鉄男から、一緒に漫画をつくりたいと話を持ちかけられる。鉄男の投稿作を読んだ町蔵は、うまいがただそれだけ、という内容に、だから自分の原作が欲しいのだと半ば納得するのだが、鉄男が小学生の時に描いた大量の漫画は、今の町蔵でも敵わないような、背筋の震えるものばかりだった。これだけ描けるなら、原作なんていらないだろう。そう問いつめる町蔵だったが、帰ってきた鉄男の返事は、小5の時に父に向けて描いた漫画を最後に、もうストーリーが思いつかないんだ、というものであった……。

 漫画家を目指す二人の高校生の物語、ではなく、二人の高校生が漫画家になる過程の物語、です。どう違うのかと言うと、作中で町蔵と鉄男の二人が手に入れるものは、技術ではなく意志である、という事でしょうか。漫画家志望として四苦八苦するシーンというのは少なく、もっと内面的な部分で苦しんで苦しんで、それでも前に進んでいく、というシーンがメインを占める作品です。漫画家志望という設定は、あくまでこの作品を表現するための手段である、と言ったほうがわかりやすいかもですね。

 作品としてはフツーに面白いですし、第1話の台詞を最終話でも使うなど、首尾一貫もしていて良かったとは思うのですが、この作品、単行本のオビで他の漫画家が褒めすぎじゃね? って思うくらい褒めてるんですよね。島本和彦、土田世紀、藤子不二雄Aという錚々たるメンツが褒めているわけですが、それを読むと、あー、この作品は、漫画家もしくは漫画家志望くらいの人じゃないと、本当の面白さはわからないのかなー、なんて気持ちにちょっとなってしまいます。しょんぼり。

 作者が現在連載中の「少女ファイト」も、もしかしたらバレーボールを知らないと本当の面白さは理解できない、という作品なのかもしれませんが、少なくとも今のところは、私はこの作品よりも楽しんで読めています。特定の人にしか本当の面白さがわからない漫画よりも、もっと間口を広くして、万人受けする作品の方がいいと思うのですが、あれ、その話題って、このG戦場ヘヴンズドア内でも語られてましたね……。その問に対する答えが、この作品ってことなのかなー。

| | コメント (0)

2009/05/11

少女ファイト

Img314 日本橋ヨヲコ 著。イブニングにて2005年より連載中、単行本5巻まで以下続刊。

 ささいな喧嘩から「ねーちゃんなんか死んじゃえ」と言ってしまった翌日、女子バレー強豪校のレギュラーだった姉は、春高バレー準決勝を勝った帰りに交通事故で死んでしまった。以来、姉より7つ年下だった大石練は、その間だけは姉のことを忘れられるという理由で、バレーにのめり込んでいく。姉に劣らぬバレーの実力を持っていた練は、やがて所属していた小学校のチームを全国大会準優勝へと導くが、独りよがりなプレーは他の部員たちの反発を買い、部員全員が私立白雲山学園へスカウトされたというのに、練以外の全員が示し合わせて辞退するという目にあってしまう。そして3年後――もう調子にはのらない、友だちもつくらない、という決意の元、わざと実力を隠して中学の3年間を補欠のまま終えようとしていた練は、ある日レギュラーの一人を怪我させてしまい、代役として練習試合のスタメンに選ばれてしまう。予期せぬ3年ぶりの実戦は、練にバレーの楽しさを思い出させるには十分すぎるものだった。だが好プレーを連発する練は次第に熱くなってしまい、試合中にチームメイトと接触、2人とも負傷退場することとなり、試合も中止に。さらに痛めた背筋を幼なじみで整骨院の跡取り息子である式島滋に診てもらっていたところ、監督に逢引していたと誤解され、中学から高校への特待生としての進学も絶望的になってしまう……。

 天才系バレーボールマンガ。喧嘩して謝る前に相手が死んでしまうとか、もう友だちなんてつくらないとか、ありがちな設定だとは思いますが、ありがちというのは王道と言い換えることもできるわけで、そういう設定をうまくつかった、非常に面白い作品です。上記あらすじは正直なところプロローグで、本編はこの後、姉が死んだにもかかわらず翌日の決勝戦に出場しそのまま優勝した、 私立黒曜谷高等学校に練が進学するところから始まります。2年生が3人しかいないチームに1年生6人が入部し、個々の実力は高いもののバラバラだったチームが少しずつまとまっていく、という感じの流れですね。

 特筆すべき点としては、小田切学という女子キャラがいるのですが、練にあこがれていて、いつか練を主人公としたバレーボールマンガを描くのが夢で、もっとバレーボールの事を知るためにバレー部のマネージャーになろうとするが、なりゆきで選手として入部してしまう、という、フツーの努力系作品なら主人公で全然おかしくない設定だったりします。メインが練の内面描写や精神的成長であるのは間違いないのでしょうが、学の技術的な成長物語部分も、これはこれとしてとても面白いです。

 作者は他に何作か連載終了した作品を持っていますが、この作品が一番の代表作となっているみたいですね。他の作品は読んだことがないのですが、基本的に同一世界観の元での話になっているということなので、機会を見つけて読んでいきたいなー、と思っています。

| | コメント (0)

その他のカテゴリー

| | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | 単行本感想 | あさりよしとお | あずまきよひこ | いけだたかし | かがみふみを | こうの史代 | そにしけんじ | たがみよしひさ | ちばあきお | ひな。 | ふくやまけいこ | まるのすけ | みさき速 | むんこ | ゆうきまさみ | モリタイシ | 井原裕士 | 佐野妙 | 入江紀子 | 八木教広 | 叶恭弘 | 吉崎観音 | 和月伸宏 | 大井昌和 | 天野こずえ | 宇仁田ゆみ | 宮原るり | 小川一水 | 小池恵子 | 山口舞子 | 山名沢湖 | 山東ユカ | 岡崎二郎 | 岩原裕二 | 島本和彦 | 幸村誠 | 弓長九天 | 志村貴子 | 手塚治虫 | 施川ユウキ | 日本橋ヨヲコ | 星里もちる | 暁月あきら | 曙はる | 木尾士目 | 東屋めめ | 東村アキコ | 板垣恵介 | 林家志弦 | 栗橋伸祐 | 桂明日香 | 桜場コハル | 森薫 | 椎名高志 | 氏家卜全 | 水上悟志 | 渡辺航 | 湖西晶 | 皆川亮二 | 矢上裕 | 祥人 | 秋月りす | 竹内元紀 | 紫堂恭子 | 細野不二彦 | 緋采俊樹 | 羽海野チカ | 能田達規 | 芳崎せいむ | 荻野眞弓 | 藤田和日郎 | 西尾維新 | 近藤るるる | 重野なおき | 野広実由 | 金田一蓮十郎 | 長谷川裕一 | 雷句誠 | 青山広美 | 高橋留美子 | CLAMP | OYSTER | kashmir | アニメ・コミック | 日記・コラム・つぶやき | 読み切り