青山広美

2009/06/18

ギャンブルフィッシュ

Img351 原作・青山広美、作画・山根和俊。週刊少年チャンピオンにて2007年より連載中、単行本12巻まで以下続刊。

 エリートと金持ちしか入ることのできない超名門校、獅子堂学園。そこに転校してきた白鷺杜夢は、初日から学園のマドンナ獅子堂美華にあえてちょっかいを出すことで生徒たちを挑発、そのようなことはやめろと忠告をしにきた風紀委員の青戸に対し、宝探しゲームで敗けた方が言うことを聞く、という勝負を持ちかける。教室に隠された1枚の100円玉。その隠し場所を書いた紙を1枚と、偽の隠し場所を書いた紙を9枚を青戸が用意し、それを見た杜夢が1分以内に隠された100円玉を見付ければ勝ち、というものだ。青戸は紙を倍の20枚とすることで勝負を受け、しかもすべての紙に偽の場所を書くという手段に出るが、杜夢はディレクション(視線を誘導する技術)を使うことでそれを看破、見事100円玉を見付け出し、報酬として青戸がイカサマをし、その上で敗けた証拠となる100円を手に入れる。そして再戦はいつだろうとなんだろうと受けるが、次は200円の勝負、その次は400円、さらにその次は800円と、倍々ゲームで行うと言う。「この学園に何しにきた!」 そう詰め寄る青戸に対し、杜夢は「一ヶ月でこの100円を100億に変える」と宣言するのであった。

 タイトル通りギャンブル漫画ですが、純粋なギャンブルの勝負ではなく、いかにイカサマを決めるか、もしくは相手のイカサマを見破るか、という部分に重きの置かれた作品です。必然的にストーリーは、序盤は常に対戦相手が(少なくとも表向きは)有利で、そこから逆転していく、という流れとなります。そしてその逆転方法が鮮やかであればあるほど面白くなるわけで、そういう意味でこのギャンブルフィッシュは、間違いなく面白い作品であると言えるでしょう。物語はこの後勝負を繰り返し、次第に杜夢の本当の目的も明らかになってきつつ、究極のツンデレヒロイン、阿鼻谷(画像のキャラ。決めゼリフは「アビィ!」)との最終決戦に向かっていく、という感じです。いやー、阿鼻谷はホント最高のヒロインですよ。阿鼻谷なくしてこの作品は語れないと言って間違いないでしょう。ちなみに単行本表紙にはヒロインキャラしか出てこないので(杜夢も出たことが無い)、阿鼻谷がヒロインであることは疑いようのない事実です。マジで。

 問題点もいくつかあります。まず鮮やかな逆転劇という定義ですが、作中で登場人物がどう言おうと、読者がそう思えなければ鮮やかではないのは当たり前。そういう意味で、ルールがわかりやすいトゥーアップ(コイントスゲーム)やブラックジャック、ダイス・スタッキング(ダイスを積み上げて出目を競うゲーム)等は本当に見事なんですが、逆にルールが解りづらいビクトリーフラッグ、ミートパイルーレット等は、爽快感がどうしても少ないですよね。いかに読者に、最初は「これは勝てないだろう」と思わせ、その後「その手があったか」と思わせるか、という勝負であると言えるでしょう。あとは、作品が面白い以上は重箱の隅と言えるのですが、1ヶ月で100円を100億にすると言っているのに作中ではもう何ヶ月も経ってるとか、素数ダイス勝負の時に出てるサイの目と言ってるサイの目が食い違ってるとか、もったいないツッコミ所がいくつかあるのが残念です。

 本編は現在、クライマックスへ向けたトーナメント戦の真っ最中ということで、おそらく終わりはもう見えているのでしょう。最後まで鮮やかな逆転劇を期待しています。あと下剤を盛られたりしちゃう汚れ役ヒロイン、月夜野に活躍の場を!(聞いてない

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2009/04/26

ダイヤモンド

Img298 青山広美 著。ビッグコミックスピリッツにて1998年~99年にかけて連載、単行本全8巻完結。

 ヤクザの下っ端ながらカツアゲも満足にできない能なしのお人好し、種田恒夫は、自らの浅慮な行動から誤って対抗組織、般若組組長を拳銃で撃ち殺してしまう。生まれ変わったら今度は誰かの役にたつような人間になりたい。種田はそう思いながら、大好きだった母親に棄てられた思い出のドーム球場で自殺しようとするが、外野席にいたところを東京フェニックスの若き4番、童子秀巳の放ったホームランボールが直撃。自殺は失敗し、種田は逮捕、懲役18年の実刑判決を受け、投獄されてしまう。それから五ヶ月後……。般若組の報復を恐れて独房で一人震えていた種田は、突如現れた見知らぬ男たちに拉致されてしまうが、連れて行かれた先はなんと、あの思い出のドーム球場だった。「今日からここがお前の監獄だ」 監督を名乗る男はそう言うと、種田に野球のバットを手渡す。それは、過剰防衛で誤って浮浪者を殺してしまった東京フェニックス4番童子秀巳の影武者としての、種田恒夫の物語の始まりであった。

 設定や展開にちょっと荒唐無稽なところのある、プロ野球を舞台としたヒューマンドラマ。見た目がそっくりというだけで影武者に仕立て上げられたずぶの素人が、たった2週間でプロの球を打てるようになり、その後は三塁守備まで機敏にこなしてオールスターまでにホームラン35本を打ってしまうという、それだけ聞くとリアリティがあるとはとても言えないような作品。ですが、そんな無茶な設定や展開がむしろアリだと思ってしまうくらいの、最高に面白い作品でした。

 プロという世界に入り、ただ好きというだけでは野球をやっていられなくなった人たち。そんな彼らが、今まさに最高に楽しんで野球をやっている種田と接し、押し殺していた自分の本当の想いを取り戻す。そういったテーマがこの作品の根本には流れており、それがそのままこの作品がこれだけ面白い理由にもなっていると思います。199勝投手浜野正平編や、ナックルボーラー山田一男編、メジャー帰りのフラッシュ早川&不肖の弟早川勝次編等の最高に面白くて格好いいエピソードには、例外なくこのテーマが含まれています。また、最終回、童子がいばらの道を選んだ理由も、自分の本当の想いに従う、というテーマに基づいた結論と言えるでしょう。

 今回はいつもにまして断定口調ですが、もうそれだけ私がこの作品を好きなんだという理由だと思ってください。最終回は読んでいて泣けました。今回久しぶりに読み返して、やっぱりうるっと来ましたよ。読むことができて幸せだとまで思えた作品は少ないですが、私にとってこの作品は、間違いなくそのうちの一つです。

 作者は現在、週刊少年チャンピオンにて連載中の「ギャンブルフィッシュ」の原作をやっています。確かに画はクセがあるし今風でもないので、少年誌では原作の方がいいのかもしれませんね。ギャンブルフィッシュは波はありますが総合的には面白いですし、そろそろ来るであろうクライマックスに向けて今後とも期待していますが、また作者本人の画での作品を読みたいなー、と思っています。

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