みさき速

2009/08/26

酒は辛口 肴は下ネタ

Img422 みさき速 著。ヤングチャンピオンにて2008年より連載中、単行本1巻まで以下続刊。

 女嫌いの硬派な青年、野々宮太郎が一人で切り盛りをする、東京下町の居酒屋「男道」は、安くて旨いが身上の、純粋に味を楽しむ酒呑みの店。高級店じゃない、小さくても客が飾らずに楽しめる店がやりたいと考えていた太郎にとって、男道は理想の店であった。だがある日その店に、ガラガラより先に張型を握り、枕絵以外の絵本には見向きもせず、寝物語には団鬼六を読んでやらねば寝付かなかったという、骨の髄からの色魔にして太郎の歳の離れた小学生の妹、花七が現れ、彼を実家に連れ戻そうとする。実は太郎の実家は京都で300年続くすっぽん料理の老舗「華屋」なのだが、そこの長男であるにも関わらずしきたりにより後を継ぐことができないため、太郎は家を飛び出してしまった、と花七は思いこんでいたのだ。だが、口を開けば出てくる言葉は悪意の無い色ネタだが、兄を想う気持ちは本物であった花七は、いつも仏頂面でずっと幸せではないんだと思いこんでいた兄が、ここでは客にも慕われ幸せに店をやっていたことを知り、連れ戻すという考えを改める。自分を理解してもらったのだと喜ぶ太郎であったが、花七のしばらくこの店で社会勉強させてほしいという願いをうっかり聞き入れてしまったがために、その日から色魔、花七による悪意の無い色ネタトークが、大事な店にこだまするようになってしまうのであった……。

 そんな設定の、居酒屋というか小料理屋を舞台とした色ネタコメディー。花七の思考、セリフは等は、それが下ネタと受け取られると思いながらの意図的なものでは(多分)無いので、下ネタではなく色ネタと言うべきだと思います。受け手からしたら下ネタになるんでしょうから、タイトルはこれでいいんでしょうけどね。どちらにせよ、小学6年生の女の子がそういうセリフを喋りまくるというギャップと、大人なのにそれに振り回される太郎という構図で笑いを取る、コメディー作品です。「曲芸家族」といい「殺戮姫」といいこれといい、最近の作者の作品はどれも主人公の男が女に振り回されるという構図ばかりなのですが、そいういった構図がそもそも好きだし描きやすいんでしょうね。私も好きですので、もっとやってください(聞いてない

 この野々宮花七というキャラクターなんですが、作者の他作「曲芸家族」に、同姓同名見た目も同じのキャラが出てくるんですよね。性格もかなり近いのですが、設定が微妙に違うので、一応別キャラなんでしょう。曲芸家族の花七を元にして、この作品の花七をつくった、というのが正解なのかなー。それ自体は別に問題でもなんでもないんですが、こういうことをやられてしまうと、曲芸家族の再開はもう無いであろうことを思い出してしまい、非常に淋しいです……。

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2009/08/01

殺戮姫

Img396 みさき速 著。週刊少年チャンピオンにて2007年に短期集中連載、単行本全1巻完結。

 臆病でものぐさな高校生、石動王士(おうじ)を慕う、いつも手袋をしている女子高生、森川流(るう)。彼女は実は、人間のことを嫌だと思ったとき、そこにいる人たちを無差別に殺してしまうという、凶悪な殺人鬼だった。自分が虐げられても耐えられるが、自分以外が虐げられた時に発する苦痛を感じ取ったとき、殺人鬼へと変貌してしまう流。それに勝る感情は、王士への愛情のみ。必然的に王士は、全世界を流という殺人鬼から守る救世主ということになってしまうのだが……流が人間を嫌と思うきっかけをつくりだすような、法で裁くことが難しい凶悪犯罪者たち。流の兄は、彼女のガス抜きのためにと、流にそういった犯罪者を殺させようとする。そして流を唯一止めることができる王士は、そこではたと思い悩む。はたして自分は、そういった者たちならば、流の魔の手から守らなくてもいい、と言ってしまっていいのだろうかと……。

 そんな設定のヒューマンドラマ。スプラッター要素多々有り。基本的には、法で裁けないような悪人を裁く、というスタイルなわけですが、そこに上記のような、凶悪犯なら殺してもいいのか? という葛藤が加わる感じです。さらにそこに、流は一定期間ごとに人を殺してガス抜きをしないとやばい、という正当性も加えている感じですね。あるていど長期の連載になれば、最後はついに覚醒してしまった流に対し、王士は……という形の最終章になるんでしょうが、残念ながらそこまでは行かずに終了となってしまいました。短期集中連載が当初の予定通りだったにしても、人気があれば続いていたんでしょうし、ちょっと残念でしたね。ただまぁ、凶悪犯の描写はなかなかにグロいし、読んでスカッとするタイプの話でもないので、人間の陰鬱な部分ばかり読まされてもなぁ、という感想になってしまいがちなのも、正直なところだったんですけどね。さじ加減の難しい作品だったということでしょうか。

 作者は現在、ヤングチャンピオンにて「酒は辛口 肴は下ネタ」という作品を連載中とのこと。「曲芸家族」の一キャラが主人公らしいので、単行本が出たらぜひ読んでみたいと思っています。あと、今週の週刊少年チャンピオン(2009年35号)にて、「特攻天女」の番外編が掲載されていたりします。特攻天女は読みたいとは思っているんですが、まだ読んでないんですよねー。文庫版でも刊行されれば、それを機会に読むんだけどなー。

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2009/01/30

曲芸家族

Img171 みさき速 著。週刊少年チャンピオンにて2003年~2004年にかけて連載、第一部終了後中断中。単行本4巻まで。

 夢は平凡だが平和な一生を送ることだという、現実主義者の中学生、一堂天は、ある日学校の屋上で寝ていた少女に出会う。その少女の事が気になりながら天が家に帰ると、なんと置き手紙と共に両親が失踪。天は両親に頼まれたと言ってやってきたサーカスの団長に連れ去られてしまうが、サーカスの敷地内で学校で出会った少女を見つける。だが、なんと少女は天の妹の輪であり、さらに姉の円をあわせた三人は、一卵性の三つ子なのであった。果たして学校で出会った少女は円だったのか、輪だったのか。そもそもなんで三つ子だということを今まで教えられてなかったのか。というかそれを聞くべき失踪した両親は、どこへ行ったのか。一堂天の平凡な人生は、一向に始まる様子を見せないのであった……。

 舞台はサーカスですが実際に興行をするシーンはほとんどなく、円、天、輪の三つ子を中心に据えた、一座に所属する様々な特異な人たちの繰り広げるコメディーです。平凡に憧れる少年の非凡な人生、と言う感じで私は非常に好きだったのですが、設定や伏線をたくさん残したまま第一部完となり、その後再開される様子もまったくありません。打ち切りにはあまり見えない終わり方だったので第二部も期待していたのですが、作者はその後「殺戮姫」という全1巻の短編を同誌で発表していますし、もう曲芸家族が再開されることはないんだろうなー、という感じでがっかりです。天が円と輪を意識しつつも「俺はシスコンのナルシストじゃなーい!」って苦悩するシーンとか好きだったんだけどなー。

 作者はこれや殺戮姫よりも、デビュー作の「特攻天女」の方が圧倒的に有名ですね。色々な噂も聞くし興味はあるのですが、全30巻というのがネックとなり読んでいません。さすがに気軽に手を出せる巻数じゃないかなー。

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