藤田和日郎

2009/08/08

黒博物館スプリンガルド

Img403 藤田和日郎 著。モーニングにて2007年に短期集中連載。単行本全1巻完結。

 1837年のロンドンに突如現れた、怪人「バネ足ジャック」。その名の通りバネになっている足を操って空高く飛び跳ね、目は燃えていて口からは青い炎を吐き、蛇腹になっている腕の先には鋭い爪が付いているという正体不明の怪人は、若い女性を散々驚かせるだけ驚かせた後、スコットランドヤードの追跡を見事振り切り、姿をぷっつりと消してしまいます。そして3年後、再び現れたバネ足ジャックは、今度は立て続けに4人の女性を殺害。スコットランドヤードのジェイムズ・ロッケンフィールド警部は、かねてから疑っていたウォルター・デ・ラ・ボア・ストレイド侯爵の元を訪ね、お前がバネ足ジャックなんだろうと問いつめますが、逆にウォルターは、バネ足ジャックは殺しなんかしない、と何かを知っているような顔で、強く反発するのでした……。

 現実に記録として残っている事件「バネ足ジャック」をモチーフとした、ゴシックホラー。全6話と短いお話だけあって、二転三転はしませんが、きちんと事件が起こり、きちんと解決する、という感じで、全1巻としては問題なく面白い作品でした。なんというか、「うしおととら」「からくりサーカス」と長編を2つ終わらせた作者が、こんな感じの話もちょっと描いてみたいなー、と言っているのが聞こえてくるような気がする作品です。

 作者の作品は、主人公の一人として子供が登場するのが普通ですので、この作品のように子供がほとんど出てこない作品は、ちょっと新鮮でもありますね。単行本には本編以外にその後の外伝も収録されているのですが、そちらは子供が主人公になっていて、いつもの藤田和日郎だなー、と思ってしまいました。

 今も昔も小学館で作品を発表し続けている作者の、唯一(?)の小学館以外でのこの作品。一応、黒博物館シリーズ、という構想もあるみたいなので、小学館とは喧嘩別れにならない程度に、また続編を期待しています。複数の出版社で描くこと自体は、いいことだと思いますしね。

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2009/05/28

うしおととら

Img329 藤田和日郎 著。週刊少年サンデーにて1990年~96年にかけて連載、単行本全33巻完結。

 中学二年生の蒼月潮は、ある日自宅の蔵の地下室で、槍によって壁にはりつけられている化け物を見つける。人間でないと抜くことができないと化け物が言うその槍こそが、潮が住職である父から教えられていた獣の槍であり、化け物は500年前からそこにはり付けられているのだった。潮は化け物からなんでも言うことをきくから槍を抜いてくれと頼まれるが、自由になったら人を食うと聞かされて言うことを聞くはずもなく、地下を後にする。だが、潮が地下への扉を開いてしまったことで、閉じこめられていた化け物の妖気が地上に流れ出て、魚妖や虫怪と言った小妖怪がすでに集まりだしてしまっていた。槍を抜けば退治してやると言われ、潮は悩んだ末に槍を抜くが、化け物は当たり前のように潮に襲いかかる。だがその時、潮が手にしていた獣の槍が力を発揮、髪が伸び目は窪み身体能力を著しく向上させた潮は逆に化け物を追い立て、見事なコンビネーションでついに魚妖が集まって巨大化した化け物を撃破する。こうして化け物は隙を付いて潮を食らうため、潮は自らが解き放ってしまった化け物を好きにさせないため、奇妙な共同生活が始まるのであった……。

 槍に選ばれた中学生、潮と、2000年以上生きている大妖怪、とら(命名、潮)のでこぼこコンビが織りなす、妖怪バトルアクション。うしとらは鬼門の方角です。序盤は互いに隙を覗いあいながらも妖怪退治を続けていく感じですが、そのうちに白面の者という強大な化け物の存在が明らかになり、獣の槍やとらの因縁全てがそこに収束していく終盤はまさに見事の一言です。特にとらの正体というか経歴? にはかなり驚かされました。第1話からそこまで考えてあったかどうかは謎ですが、そうでなかったにしても実に見事なものです。

 ストーリーや設定も良かったですが、個人的に特に良かったのは、サブタイトルとコマ背景の書き文字ですね。この作品は章タイトルと各話タイトルがあるのですが、同じ章では各話タイトルに統一性が付けられている事もあったりと、内容にマッチした秀逸なものが非常に多かったです。コマ背景の書き文字とはようするに擬音の事ですが、この作品ではシリーズのラスボスを倒す際の表現として、漢字一文字で擬音を表現することがよくあるんですよね。使う漢字はその時々によって違うわけですが「閃」「割」「削」と言った漢字を背景に背負ってのとどめの一撃は、爽快感に重みを含ませる見事な表現だったと思っています。

 あとは妖怪マンガとして、妖怪の造形もおどろおどろしく気持ちの悪いものが多かったのも良かったです。個人的に一番記憶に残っているのは、飛行機に取り憑いた化け物「衾(ふすま)」ですね。いやー、あれは本気で夢に見ますよ。ラスボスである白面の者をずっとシルエットで見せていたのも、いい演出でしたよね。

 とまぁまだまだ褒めたりないのですが、ひろげた風呂敷も見事に畳みきり、全編通して本当に面白い作品でした、ということで締めたいと思います。ホント、面白いですよ。

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