星里もちる

2009/12/30

りびんぐゲーム

Img554 星里もちる 著。ビッグコミックスピリッツにて1990年~93年にかけて連載、単行本全10巻完結。

 社長を含めて従業員5人という小さな会社に勤める25歳の会社員、不破雷蔵の目下の不満は、住んでいる部屋がとにかく狭いということ。意を決して引っ越した先は、家賃は高いが広々とした2DK、しかも後日決まった会社の引っ越し先であるビルの目の前という好立地だったのですが……。なんと会社の引っ越し当日になって、会社が入る予定だったそのビルが手抜き工事で傾いてしまい、入れなくなってしまいます。元のビルには戻れないし、かといってある程度の広さがあって、すぐに荷物が置けて仕事が始められる場所なんて……。というわけでまさかのまさか、その条件にぴたりと当てはまった不破の新居に、会社が転がり込んできてしまったのでした。狭いのは嫌だと訴える不破でしたが、現状他にどうしようもなく、最終的には我慢するしかありません。ところがただでさえ狭いそこに、以前から約束していたからと、新人を入れると社長が言い出します。もう机を入れるスペースも無いと不満を募らせる不破でしたが、島根から出てきたばかりという15歳の女の子、氷山一角(ひやま いずみ)の希望とやる気に満ちあふれた台詞を聞いているうちに、不破は自分がまだ新人だった頃、仕事に広さは関係ありませんと熱意を持って言っていたことを思い出すのでした……。

 そんな出だしの、ホーム(住宅事情)ラブコメ。ストーリーはこの後、15歳ということで部屋探しがうまくいかないいずみちゃんが、最終的には不破くんの部屋(兼会社)で一緒に暮らすようになり……という感じで進んでいきます。そのあたりはとにかくいずみちゃんが健気で可愛いということもあり、展開的にもシチュエーション的にも読んでいて非常に楽しかったのですが、残念ながら中盤以降の三角関係部分にちょっと不満が残りました。具体的に言うと、今作では不破くんといずみちゃんはずっと両思いなのですが、そこに新キャラを出してどっちかに近づけさせて誤解から話がこじれて……、というパターンの繰り返しなんですよね。中盤までの時子絡みの三角関係はキャラも立ってたし設定もきちんとしてたし問題なかっただけに、中盤以降は非常に残念でした。

 しかしその部分にさえ目を瞑れば、いずみちゃんは健気で可愛いし、住宅事情ネタというのは当時の時流にもあっていましたし、いずみちゃんは健気で可愛いし、丸っこい輪郭の画は私好みだし、いずみちゃんは健気で可愛いしと、もう壊れたレコードのようになってしまうくらい、文句なしに私好みの作品でした。なんというかですね、この作品は私のマンガ人生の元となる作品(の片方)である、と断言してしまうくらい、私にとって重要な作品だということです。ああホント、いずみちゃん可愛かったなー。当時は萌えなんて言葉はありませんでしたが、今思うに私が初めて萌えたキャラというのは、このいずみちゃんだったのでしょう。

 ちなみに私のマンガ人生の元となるもう一つの作品は、椎名高志「ゴーストスイーパー美神 極楽大作戦!!」です。2009年の最初にGS美神の感想を書き、最後にこのりびんぐの感想を書くというのは、初期の頃から考えていたことですが、無事達成できてほっとしています。閑話休題。

 作者はその後、いくつもの作品を連載、完結させ、現在はビッグコミックスペリオールにて「光速シスター」を不定期連載中。どの作品もつまらないとまでは言いませんが、徐々に面白みは減ってきてるかなー、というのが私の正直な感想です。そんな状態なので、りびんぐの続編を書いて欲しいとはちょっと怖くて思えませんが、いつかまた、りびんぐ並みに面白い作品を描いてくれることを信じて、これからも読み続けたいと思っています。

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2009/10/11

いきばた主夫ランブル

Img470 星里もちる 著。ヤングキャプテンにて1988年連載開始、同誌休刊後月刊少年キャプテンに移り、1989年完結。単行本全1巻。

 会社は倒産し、社長は金を持って逃げてしまった。メカが得意なアニメーターの工藤直人は、泊まり込みの仕事中にそう言われてしまう。幸いにも同棲している新人少女漫画家、信崎千秋の収入で当面の生活費はなんとかなりそうだったが、部屋は汚れ放題で食事も満足に取っていないという彼女のために、直人はとりあえず部屋を片づけ、ヤキソバをつくろうとする。だがニンジンの皮は剥かない、麺は湯通ししないというやり方を、知り合ったばかりの隣室の高桐に見咎められるのだが、直人は彼の手際いい家事のこなし方よりも、彼が誇りを持って専業主夫をこなしている、という生き方の方に衝撃を受けるのだった。やがて直人は、忙しい千秋の代わりに炊事洗濯をこなしていくうちに、自身が家事好きだということに気づきはじめるが、女に働かせて自分は専業主夫をやるという関係が、プライドと世間体も邪魔をして、どうしても認められないでいた……。

 そんな出だしの、ホームコメディ。発表されたのがもう20年も前なので、設定に関しては古くささは否めませんが、昔のマンガだと思いながら読む分には文句なく面白い作品です。ストーリーは上記あらすじ通りに、直人が悩みながらも主夫業を続けていく、という感じで、それ以上でも以下でもありませんが、ラストの締め方も満足がいくレベル。掲載誌が休刊ということで連載継続もきっと大変だったんでしょうが、きちんと完結してよかったと思える、良い作品でした。

 作者と言えばおそらく代表作は、出世作でもあるビッグコミックスピリッツ連載の「りびんぐゲーム」だとは思いますが、それ以前に描かれた徳間書店での作品が、どれもこれも本当に面白いんですよねー。漫画の山の中から発掘するのが大変なのですが、見つかったらそれらの感想も書きたいなー、と思っています。

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2009/08/06

危険がウォーキング

Img401 星里もちる 著。プチアップルパイにて1986年連載開始、掲載誌を月刊少年キャプテンに移し、89年まで連載、単行本全4巻完結。

 夏休みを控えたある日、お笑い好きの中学1年生、牧野いくろうは、この春に北海道から越してきた岡原佳枝に、ついに告白を決意する。だが放課後コート裏に来て欲しいという手紙にOKをもらったのはいいものの、突然教室で謎の爆発が起こり、怪我をしたいくろうは病院へ搬送。爆発の中心にいたにもかかわらず無傷だった佳枝は、事情聴取のために警察へ連れて行かれるが、なんとそこで恐るべき事実が明らかになる。それは、佳枝の汗はニトログリセリンに近い成分でできており、気温が30度を超えると、落ちたショックなどで爆発するというのだ。冗談のような話だが本当のため、佳枝は気温が下がる夕方まで、警察内で保護されることになるが、そこで彼女はふと思い出す。放課後コート裏で、いくろうが待っているということに……。

 そんな設定の、ドタバタラブコメディー。気温もしくは室温が30度を超えている状態で汗がおちると、爆発します。あと涙も爆発しますが、涙の場合は感情の大小で爆発の規模が変わります。いくろうは佳枝の体質について特に有効な手だてをもっているわけではないのですが、暑いところには行かせないようにしたり、一緒に居ないときでも爆発があれば駆けつける、というヒーロー的立ち回りです。あといくろうがいることで話がコメディーに大幅に偏り、あまり深刻にならずに済んでいる、と言う感じでしょうか。特異な設定ではありますが、そもそも学園ラブコメとしての出来も良かったし、非常に面白い作品でした。

 この作品には山場が2回ありまして、1回目が三角関係の挙げ句に、佳枝が北海道へ帰ってしまおうとするところ。北海道に戻ってしまえば気温が30度を超えることはないでしょうし、ニトロの汗を気にする必要もありませんからね。2回目が温室状態のエレベーターに、佳枝といくろうの2人が閉じこめられてしまうところ。このままだといくろうに大怪我をさせてしまう……、と考えた佳枝は、自らの意志で新陳代謝を止め……。というものです。パターンは違いますがどちらもこの作品だからこその山場であり、こういった山場があったからこそ、この作品自体が面白かったんだろう、と思っています。

 作者はその後小学館に移り、ビッグコミックスピリッツで描いた「りびんぐゲーム」が恐らく代表作と言えるものでしょう。というかりびんぐは、私のマンガ人生の元となる作品(のうちの片方)です。私にとっては記念碑的作品のため、タイミングを見計らってレビューする予定。閑話休題。

 現在作者は、ビッグコミックスペリオールにて「光速シスター」を不定期連載中。作者の作品って基本的にオトナが主人公であることが多く、中高生が主役の作品って初期の頃だけなんですよね。また中高生を主人公とした作品を読みたいなーとは思うのですが、今となってはさすがに難しいのかなー。

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