椎名高志

2009/12/20

絶対可憐チルドレン

Img539 椎名高志 著。週刊少年サンデーにて2005年より連載中、単行本19巻まで以下続刊。

 21世紀初頭、およそ地球上のあらゆる分野で、エスパーはその重要性を増していった。だがその才能は稀少であり、大きな影響力を持つとされるレベル4以上の者は全体の3%以下。内務省特務機関超能力支援研究局、通称BABELが把握している国内のレベル7に至っては、たったの3人であった。そろって10歳というその3人、レベル7サイコキノの明石薫、レベル7テレポーターの野上葵、レベル7サイコメトラーの三宮紫穂は、その強大すぎる能力からノーマルの子供たちとは隔離され、BABELによって育てられつつ、彼女たちでないと対処できないような事故や犯罪等に対応させられていた。新たに彼女たちの主任となった一般人、皆本光一は、彼女たちのことを自分の感情も制御できないようなワガママなクソガキと言いつつも、自分も超天才で学校等に馴染めなかった過去を持つことから、少しでも彼女たちのことを理解し、彼女たちが健やかに育つことができるよう、様々な方面から働きかけるようになっていく。だが世間にはまだまだ誤解も多く、エスパーとノーマルの間には、依然深い溝があるままだった。そんな折、皆本は太平洋戦争時の動物実験から生まれたレベル7プレコグ(予知能力者)のイルカ、伊九号から、恐るべき予知を聞かされる。それは、10年後の未来、薫、葵、紫穂の3人はエスパーの地位向上を目論むテロ組織、PANDRAの一員となり、皆本はその女王となった薫を、ブラスターで撃ち殺す、というものであった……。

 そんな出だしのSFコメディ。超能力を持つ者(エスパー)と持たざる者(ノーマル)が混在する世界というものを構築しようとすると、当然そこには対立や利害関係が生まれ、そういった部分をある程度正面から思い切り描いている作品です。自然とストーリーは重厚かつ暗いものになってくるとは思うのですが、そのあたりはキャラや見せ方を工夫することで、重苦しい展開にはならないようになっています。具体的には、主人公を10歳の女の子3人にして、ギャグを多く入れている点ですね。ギャグ展開は作者の得意とするところでしょうし、掲載誌的にもこれで問題ないでしょう。一つ個人的に思うのは、メインストーリーの一つとして、20歳の皆本にあこがれる10歳の女の子たち、という部分があるのですが、このあたりが非常に少女漫画向けだと言うこと。敵方の兵部の存在なんて、もうそのまま使えるでしょうし。その他さじ加減を変えれば少女雑誌に載っていてもおかしくない作品になったと思うので、まだこの作品がいまいちブレイクしきれていなかった頃は、少女漫画にしちゃえば良かったんじゃないのかなー、とずっと思っていました。現在は作中で数年が経ち、中学生編になったことで、あまり少女漫画向けではなくなってきたかなー、とは思っていますけどね。

 現在作中では、BABELとPANDRAの戦いという構図以外に、エスパーをテロの道具として扱う「黒い幽霊」という組織が出てきて、それぞれの思惑が絡み合いつつ、話が進んでいる、という感じです。PANDRAは局所的な戦闘力はともかく、規模としてはそれほど大きなものに成り得ないと思うので、個人的にはこの黒い幽霊にBABELが対抗しつつ、そこにPANDRAが絡んでくる、という構図が一番しっくりくるんじゃないかなー、と思っています。

 物語の終着地点は、やはり10年後に薫が皆本に撃たれるという予知を覆す、ということになるのでしょう。ただもちろん終わる前に、対黒い幽霊も対PANDRAもある程度の決着を付けなければならないわけですが、PANDRA側は予知さえ覆ってしまえば、わりとどうにでもなってしまう気がするんですよね。そうなるとあとは黒い幽霊だけですが、まぁこちらはさすがに力で制圧するしかないのかなー、という気はします。最終的には黒い幽霊vsBABEL&PANDRA、という構図になるのかもしれませんね。パンドラの箱の底には希望が、って話は絶対にからめてくるでしょうし、来るべきその最終シリーズでそのあたりをどう見せてくれるのか、今から楽しみにしています。

| | コメント (0)

2009/11/05

MISTERジパング

Img490 椎名高志 著。週刊少年サンデーにて2000年~01年にかけて連載、単行本全8巻完結。

 時は天文17年(西暦1548年)、なけなしの所持金を夜盗に奪われ、殺されそうになっていた日吉は、うつけと呼ばれた織田家の跡取り、信長に偶然助けられる。その後、行商をして生計を立てようとしていた日吉は、ヒナタという一人の渡り巫女と知り合いになるが、実は彼女は武田家の抜け忍であった。偶然日吉を見つけて後を付けていたがために、信長と部下の犬千代らは日吉、ヒナタと共に武田忍軍に囲まれてしまうが、その時気を失ったヒナタが、突如神懸かったかのように話し出す。曰く、自分はヒナタのもう一つの人格であるヒカゲであり、予知能力で武田家の滅亡を占ってしまったが為、追われる身になってしまったのだという。ヒカゲの予知と日吉の機転によってその場を逃れた一行だったが、その頃三河では天回という謎の僧が、時代を変革しようと動き始めていた……。

 そんな感じの、史実を元にした歴史ファンタジー。作者の作品らしく、ふんだんにコメディーも取り入れられています。日吉はいわゆる日吉丸=豊臣秀吉であり、信長との関係は大筋では史実に基づいた物となっていますが、細部はけっこう(かなり)違います。連載当初は、予知ができる巫女ヒナタ=ヒカゲだけがオリジナル設定だったんですが、中盤で謎の僧天回が実は未来からやってきた者であるとわかり、タイムパラドックスまでからんできてしまい、展開としてはかなり史実とは離れてしまいました。しかしながら、信長や秀吉と言ったメインキャラが皆それぞれキャラが立っていて、作中でも(ある程度は)納得のいく言動をしていたため、物語としては最後まで面白く読むことができました。史実との整合性に関しても、ギリギリ踏みとどまったかなー、という感じですね。ツッコミ所は色々ありましたが、それらをふまえた上でのファンタジー作品として非常に笑える作品でした。ようはアレです、「こんな信長や秀吉もアリだよね」ってことで。

 当時はこれは打ち切りだったのかなー、と思っていましたが、進めていけばいつかボロが出るor史実とは異なってしまうわけで、もともとあったいつ終わらせるかの候補の一つで終わらせたのかもしれませんね。ただ、やはり信長ということで桶狭間くらいまでの構想はあったでしょうから、そこまでは読んでみたかったなー、とは思わずにはいられませんでした。信玄の出番が終盤すごい多かったので、長篠は難しかったかもですけどね。

| | コメント (0)

2009/10/13

一番湯のカナタ

Img472 椎名高志 著。週刊少年サンデーにて2002年連載、単行本全3巻完結。

 この銭湯は絶対に潰さない……! 子供の頃に固くそう誓った星乃湯の跡取り息子、星野涼。彼が今日も高校をサボって開店前の掃除をしていると、突然湯船に複数の人影が現れ、次の瞬間爆発。それに巻き込まれた涼は致命傷を負ってしまうが、実は湯船に現れたのは、オーバーテクノロジーを持った宇宙人の一行であった。トルマン王家の王子だという少年、カナタとその姉ユウリ、そして2人のお供であるタコのような生き物に助けられた涼だったが、実はカナタとユウリの星は家老のクーデターにより制圧されてしまい、2人は命からがらこの辺境の星へ逃げ出してきたのだという。壊れた銭湯をあっというまに直してしまったり、別の宇宙人も現れたりしたことで、涼も最終的にはカナタたちの話を信じ、父の提言もあって彼らを友だちとして家に住まわせることにする。ところが王家の者であるカナタと友になるということは、カナタの王家と軍事、経済における同盟を締結し、いわば運命共同体になるのだということを、涼は後から知るのであった……。

 そんな出だしのSFコメディー。ストーリーは最終的には母星に帰って家老を倒す、という感じになるのでしょうが、そのためにまずはカナタのガード・ロイヤルという試練を達成する、という感じで推移していきます。達成するためには、地球の平和を守ってポイントを貯めなければならないのですが、この地球の平和を守るの意味が非常に広義であるため、いろんなネタを使えるという、うまい設定だと思いました。ところがそういった広げた設定はほとんど活かすことができないまま、残念ながら打ち切り終了。最終回は最終回という感じの終わり方では全くなく、フツーに次週も載っていそうな感じの終わり方だったのですが、無理にふろしきを畳むつもりなんか無い、という作者のせめてもの抵抗だったのかなー、と思っています。

 サンデー本誌で人気が取れなかった理由ですが、私が考えるに、主人公カナタの性格付けが一番大きかったんじゃないかなー、と思っています。思考も幼く、覇気もあまり無く、他人に頼りがちというカナタの性格は、感情移入する対象としてはあまり好ましくないでしょう。逆に、この物語を実質仕切っている涼の性格付けは、主人公としてまったく問題ないものでした。おそらく作者は、カナタ+涼でダブル主人公という形にしているんでしょうが、それならばもっとはっきりと、涼を主人公にすべきだったんじゃないのかなー。あとはアレですね、カナタが王子じゃなくて可愛い女の子とかだったりしたら、もっと違ったのかも……(だいなし

 と言いつつ、カナタを王女にして一行で一番偉い人にしてしまう、というのはそんなに的を外してないかもですね。涼はナイト的立場に収まれるし、それ以外は特に変える必要も無いし、読者も喜ぶし万々歳な気がします(だまれ

 設定に関してはそのくらいにしてストーリー部分ですが、打ち切られるほどつまらないとは私は思っていませんでした。特に単行本でまとめて読むと、構成がしっかししてるのがよくわかって面白かったです。抜群に面白いわけではないけれど、少しずつ物語が収束地点に向けて積み重なっていくのが読んでいて面白い、そんな感じの作品と言えるでしょう。でも、続いてれば相当面白い作品になったと思うんだけどなー、というのは、やっぱり言っちゃいけないんですかねー。

| | コメント (0)

2009/01/01

GS美神 極楽大作戦!!

Img155 椎名高志 著。週刊少年サンデーにて1991年~1999年にかけて連載、単行本全39巻完結。現在は新装版が全20巻で発売中。

 時はバブルまっただ中、地価は際限なく上がり続け、土地を不法占拠する幽霊や妖怪退治の仕事は需要を極めていた。そういった仕事を専門に行う除霊師(ゴーストスイーパー)美神令子は、お金にはとことんまでにがめついものの、実力は業界トップクラス。今日も美神はボディコンスーツに身を包み、彼女の美貌に惑わされ時給250円で働く高校生、横島忠夫と、自力で成仏できずお祓いをしてもらうお金も無いため日給30円で働く幽霊、おキヌを引き連れ、西へ東へ悪霊退治に赴きます!

 霊能オカルトコメディ。前半はギャグ色が強く、中盤以降はラスボス、アシュタロスに向けたストーリー色の強い作品となっています。また、前半は美神さんが主人公の悪霊退治マンガであっているのですが、中盤以降は霊能力に目覚めた横島の成長マンガとしての割合も大きいです。連載中はホント信者で、サンデーの読者アンケートもよく送っていましたし、次回最終回と書かれた号を読んだ時は、あまりのショックに情緒不安定にまでなりました。好きな作品であることは間違いないですが、なんというかあれだ、人生、かな?(黙れ 好きなキャラはおキヌちゃんですが、終盤はタマモも好きでした(聞いてない

 新年一発目にこの作品を選んだ理由は、上記の通り、GS美神は私のマンガ人生の元となる作品(のうちの片方)だからです。ホント、GS美神に出会ってなかったら、こんなにマンガ読んでないだろうし、人生変わってただろうなー、と今でも思いますよ。こんな作品に出会えて、幸せでした。

 作者はその後サンデー本誌では「MISTERジパング」「一番湯のカナタ」と連載するも打ち切られていましたが、現在はアニメ化もされている「絶対可憐チルドレン」を連載中。こちらも十分面白いですし、そのうちレビューしたいと思います。

| | コメント (1)

その他のカテゴリー

| | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | 単行本感想 | あさりよしとお | あずまきよひこ | いけだたかし | かがみふみを | こうの史代 | そにしけんじ | たがみよしひさ | ちばあきお | ひな。 | ふくやまけいこ | まるのすけ | みさき速 | むんこ | ゆうきまさみ | モリタイシ | 井原裕士 | 佐野妙 | 入江紀子 | 八木教広 | 叶恭弘 | 吉崎観音 | 和月伸宏 | 大井昌和 | 天野こずえ | 宇仁田ゆみ | 宮原るり | 小川一水 | 小池恵子 | 山口舞子 | 山名沢湖 | 山東ユカ | 岡崎二郎 | 岩原裕二 | 島本和彦 | 幸村誠 | 弓長九天 | 志村貴子 | 手塚治虫 | 施川ユウキ | 日本橋ヨヲコ | 星里もちる | 暁月あきら | 曙はる | 木尾士目 | 東屋めめ | 東村アキコ | 板垣恵介 | 林家志弦 | 栗橋伸祐 | 桂明日香 | 桜場コハル | 森薫 | 椎名高志 | 氏家卜全 | 水上悟志 | 渡辺航 | 湖西晶 | 皆川亮二 | 矢上裕 | 祥人 | 秋月りす | 竹内元紀 | 紫堂恭子 | 細野不二彦 | 緋采俊樹 | 羽海野チカ | 能田達規 | 芳崎せいむ | 荻野眞弓 | 藤田和日郎 | 西尾維新 | 近藤るるる | 重野なおき | 野広実由 | 金田一蓮十郎 | 長谷川裕一 | 雷句誠 | 青山広美 | 高橋留美子 | CLAMP | OYSTER | kashmir | アニメ・コミック | 日記・コラム・つぶやき | 読み切り