たがみよしひさ

2009/12/13

NERVOUS BREAKDOWN

Img532 たがみよしひさ 著。月刊コミックNORAにて1988年~97年にかけて連載、単行本全13巻完結。

 頭脳は明晰だが身体は弱く、しょっちゅう食べた物を戻しているという虚弱体質者、安藤一意と、体力や身体能力、運転技術は一流だが、頭脳労働はからっきしという元警官の三輪青午。まるで正反対の彼ら二人の職業は、田沼平九郎探偵事務所に所属する、私立探偵である。その日の依頼主は、女子高生の稲葉美矢。映画部所属の彼女は友人の丹生佳子と共にとある湖に撮影に向かったが、早朝の撮影中に美矢だけが昨晩も泊まったペンションに戻ると、何故かオーナーに美矢と佳子は泊まっていないと言われてしまい、さらに佳子はそのまま姿を消してしまったのだという。佳子は消えてしまった。そして消えなかった美矢は、泊まったはずのペンションに泊まらなかった。安藤と三輪はこの二つの謎を解き明かすため、早速現地へと向かうが……。

 そんな感じの、探偵マンガ。脳味噌まで筋肉でできている肉体労働担当の三輪が暴れ、頭脳労働担当の安藤が吐きながら推理、解決する、という感じのコミカルとシリアスが同居する作品。元々作者の作品は、8頭身と3頭身のキャラを状況に応じて描き分けるという独自の手法がとられているわけですが、その手法を設定面でも後押ししている、という感じですね。内容はほとんどがシリアスで理論詰めで話が進んでいくので、ネームが多いのがややネックではありますが、探偵物なら当たり前とも言えるでしょう。そして探偵物というと事件の質が問題になると思うのですが、正直に言うと、この作品の事件の質が高いか低いかは私にはよくわかりません。そもそも私は推理系の作品であってもあまり自分で推理しながら読んだりはしないので、推理系作品の正しい読者とは言えないと思うんですよね。ではなぜこの作品が好きなのかというと、それはキャラの良さだと思っています。正反対の性格である安藤と三輪、それに探偵事務所の人々や様々な依頼主、関係者、犯人等々。どのキャラもそれぞれに魅力的であり、彼ら、彼女らが繰り広げる人間ドラマは、推理なんかしないでただ見ているだけでも非常に楽しかったです。なので、推理系作品としてよりも、人間ドラマとして評価している、ということですね。

 一つだけ残念な部分を上げておくと、画像の単行本表紙を見てもわかるとおり、そもそもの設定としては安藤と三輪のダブル主人公だったんだと思うんですよね。しかし上で何度も書いた通り、三輪は筋肉バカであって推理とかほとんどできないため、肝心の推理シーンでほとんど出番が無く、結果的に安藤ばかりが目立つ、ということになってしまっています。設定や展開を考えると、確かにどうしようもない気はしますが、それでももうちょっと、この点における推理だけは三輪も冴えてる、とかあれば良かったのになー、と思わずにいられませんでした。

 そして今回調べていて知ったのですが、この作品は単行本全13巻、全88話なわけですが、なんと文庫版には第89話が描き下ろされてるらしいんですよね。すでに絶版らしく手に入れるのは大変そうですが、これは読まないわけにはいかないですし、なんとかして読みたいと思っています。

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2009/11/08

軽井沢シンドローム

Img493 たがみよしひさ 著。ビッグコミックスピリッツにて1982年~85年にかけて連載、単行本全9巻完結。画像は文庫版全5巻。続編となる「軽井沢シンドロームSPROUT」は、ヤングチャンピオンにて2002年~06年にかけて連載、単行本全7巻完結。

 7年前、大宮で高校生をしていた相沢耕平と松沼純生は、それぞれカメラマンとイラストレーターを目指すため、家出をして東京へ向かう。その後プロの仲間入りはするものの、年功序列の世界に嫌気が差した二人は、とにかく日本を飛び出そうとロサンゼルスに行くことを決意。だが先立つものが無いため、一人暮らしをしている純生の姉、薫を頼って、二人は冬の軽井沢へと向かう。それは、別荘地軽井沢を舞台とした若い男女たちの、複雑な人間関係の始まりであった……。

 そんな出だしの、軽井沢を舞台とした青春群像劇。ストーリーの基本は、出てくる女キャラのほとんどと関係を持つような、女好きで無節操でちゃらんぽらんだけどケンカが強くて皆から慕われていてやる時はやる、という耕平を軸に進んでいきます。なんというか、文章にしてみるとちょっとあざとすぎる設定ですね。しかし作中では耕平は基本的に受け身であり、巻き込まれることはあっても自ら出しゃばることはあまり無いため、読んでいてあざとい設定だなー、と思うようなことはそんなにはありません。それよりも、出てくるキャラたちの複雑な相関関係を理解しながら読むのが忙しくて、気にする暇があまり無い、というのが正解かもしれません。面白い作品ではありましたが、四半世紀以上前の作品ということで今とはだいぶ意識も違うでしょうし、現在二十代前半の人たちが読んでどう思うかはちょっとわかりませんね。絵柄は作者独自のものだし、ネームが多くて読むのに時間もかかる、という点も不利かもしれません。ですがそれらをふまえた上でなら、青春群像劇として非常に面白い作品でした。人間関係が複雑でネームが多いというのは、じっくり読むのに適している、ということでもありますしね。

 その後20年近く経って始まった続編、「軽井沢シンドロームSPROUT」は、耕平と薫の息子、薫平を主人公とした話なのですが、やはり時代が変わったせいか無印と同じようなことをやっていてもイマイチ話が盛り上がらず、物語の終盤に耕平がメインキャラになってようやく面白くなった、という感じの作品でした。しかもそれだって、おそらくは無印の軽シンを知っていた私だからそう思ったのであって、知らない読者は終始おいてきぼりだったんじゃないかなー。作者は現在も漫画家を続けているわけですが、そういった点をふまえた現代風の作品を描けるかどうか、そこが今後のポイントになるような気がします。

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