小川一水

2009/12/27

復活の地

Img551 原作・小川一水、作画・みずきたつ。月刊コミックフラッパーにて2009年より連載中、単行本1巻まで以下続刊。

 王紀440年5月44日夕刻、レンカ帝国の首都トレンカを、未曾有の大地震が襲う。建物は崩れ橋は落ち、国会がまさに開催中であったグノモン宮議事堂も崩壊。引き起こされた火災は旧市街を中心にまたたくまに広がり、メイポール祭の日でもあったため人で溢れかえっていたメインストリートは、阿鼻叫喚の地獄絵図と化してしまう。鉄道、道路、通信は断絶し、政府省庁をはじめとした行政機関も壊滅。かろうじて陸軍や天軍が独自の救助活動を始める中、総督が亡くなってしまったために臨時のジャルーダ総督となった帝国高等文官、セイオ・ランカベリーは、公僕としての矜持に従い、民を救うために動き出す……。

 そんな出だしの、災害パニックSF。ハヤカワ文庫JAから出版されている同名小説のコミカライズ作品です。原作者の小説がコミカライズされるのはこれが2作目なんですが、1作目の「第六大陸」に比べると、こちらはまずマンガとしてしっかりしています。そして忠実度度合いですが、こちらも第六大陸に比べると原作に忠実であり、変に凝って失敗したりはしていないので、原作を知っている人にならばこちらの方が受け入れられやすいでしょう。ただし、この場合の忠実度が高いというのは、マンガならではの表現が少ないということでもあり、なら原作を読めばいいんじゃないの? という風にも思えてしまうんですけどね。このあたりはコミカライズ作品が持つ難しさの一つであり、どう原作と違いを出すかは作者の腕の見せ所なんでしょうが、今のところは大きく冒険することもないので、失敗もしていない、という感じでしょうか。

 ストーリーはトレンカを大地震が襲い、そこからの復旧をとある志し高き官僚の視点で描く、というものなわけで、綿密に計算され、かつストイックな原作の展開は、読んでいて非常にひきこまれるものです。このコミカライズ版も現時点ではそれほど違いはなく、良く言えば原作に忠実、悪く言えばマンガである必然性が薄いわけですが、一つだけ大きな違いがあります。それは、物語のヒロインであるスミル内親王が、未だまともに出てきていないこと……。あれれ? 小説に対してマンガの一番のメリットは、当然絵があることなわけですが、なのに見た目にも映えるヒロインを出さないってどういうこと? 確かに時系列的には出番はまだ先なんですが、小説ではプロローグという扱いにして、一番最初に出番を持ってきているというのに……。最初にヒロインを出さないメリットがあるとは思えないんだけどなー。

 原作を知っている身としては、今作は現時点ではとりあえず読める、という感じでしょうか。ただ話は今後、人間関係がどんどん複雑になり、政権争いとかも出てくるので、そのあたりをどうマンガで表現するのかなー、というのが期待でもあり不安でもあります。あとはアレですね、小説とマンガは密度が違いますから、コミカライズする際には削れるエピソードは遠慮無く削る必要があると思うのですが、今作においてはそういうった削っている部分がまだあまり無いんですよね。なので、正直このペースだと、完結までにけっこうな時間がかかってしまうんじゃないかと思います。個人的にはそれでもいいんですが、でもマンガには途中打ち切りがありますし、やっぱり難しいんだろうなー。

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2009/08/19

第六大陸

Img415 原作・小川一水、漫画・吉祥寺笑。FlexComixネクスト にて2008年より連載中、単行本2巻まで以下続刊。

 サハラ砂漠に大規模緑化基地、南極大陸にウラニウム抽出基地、ヒマラヤ9合目に観測基地、そして2025年、水深2000メートルの海底に海底都市「ドラゴンパレス」を建設した後鳥羽総建に、世界屈指のレジャー会社を傘下に持つ桃園寺グループから、新たな仕事の依頼が入る。地上とドラゴンパレスを繋ぐ交通艇リヴァイアサンで起きたトラブルを収束させた手際から、桃園寺グループ会長とその孫娘、妙に見込まれた起動建設部所属の青峰走也は、次なる建設予定地の現地調査に妙と共に行くことになったのだが、その行き先とは、ドラゴンパレスの遥か上空……そう、なんと次の建設予定地とは、月であった。

 そんな出だしの、近未来宇宙開拓物。この作品はハヤカワSF文庫より刊行中の小川一水「第六大陸」のコミカライズ作品であり、私は原作及び原作者のファンでありまして、感想もそれに則ったものになることをお断りしておきます。

 月を6番目の大陸と位置づけ、そこに10人以上が滞在できる施設を建設し、運用する。というのが原作の初期目的であり、このコミカライズ版も、今のところはそれに沿った展開になっています。まず中国の月面基地へ行って現地調査を終え、単行本2巻では新型エンジンによる輸送コスト削減を図っている段階ですが、なんというか、その……原作とこの漫画版とでは、重視してる部分が明らかに違うんですよね。漫画版はかなり劇場型ですが、原作はもっとずっとストイックですよ。文字媒体である小説と視覚媒体である漫画ではそれぞれ表現するに適したシーンがあるのは当たり前ですが、だからといって視覚表現のために意味を変えてしまうのは正直どうかと思います。特に2巻の月面基地からの帰還はひどいですね。SF考証的な部分もひどいですが、中国人宇宙飛行士の扱いもひどい。中国に喧嘩売ってるのかなー。

 近未来SFとして原作は抜群に面白いですし、このコミカライズ版にも頑張って欲しいのですが、少なくとも現在のところは、見せ方が間違ってるんじゃないかなー、という感じです。トータルで評価される小説と1話1話で評価される漫画とでは違う、というのは確かにわかりますのが、根底に流れる面白さの基となる部分は同じのはず。単行本は買い続けますので、今後の展開に期待しています。

 あと今回調べていて知ったのですが、なんと小川一水の他作「復活の地」もコミックフラッパーにてコミカライズが開始されているそうです。遥か未来だけど文明は衰退していて文化レベルは20年前の地球、という感じのとある惑星が舞台で、その首都で大地震が発生し、壊滅した都市の復興を図る、という感じの内容なのですが、これもまた原作は非常にストイックな展開のお話。まだ漫画版を読んではいませんが、正直、今のところは不安です。面白いといいんだけどなー。

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